京都から宇治川をこえて奈良へ向かう途中に連なるなだらかな山々の一帯を南山城と呼ぶ。古くから交通の要衝であったこの地帯は早くから高い文化を持っており、古刹・名刹も数多く存在する。蟹満寺、観音寺、海住山寺、浄瑠璃寺、岩船寺。賑わう観光の中心から少し離れ、ひそやかにたたずむこの寺々では、歴史を経て永らえた彩色の跡や人々を見守りつづけた仏像や堂塔が、往時の栄華、過ぎ去った時を語っている。◆【国宝】金銅釈迦如来坐像（蟹満寺）、十一面観音立像（観音寺）、海住山寺五重塔、九体仏（浄瑠璃寺）【重要文化財】岩船寺三重塔・阿弥陀如来坐像、吉祥天立像（浄瑠璃寺）

　加賀百万石の城下町金沢は、天正１１年（１５８３）、藩祖前田利家の入城以来、京、大坂、江戸表から名だたる職人を招き集め、加賀友禅や九谷焼に代表される美術工芸が盛んな土地柄となった。その伝統は現代にも受け継がれ、工芸は美術となり、かつて職人と呼ばれた作り手たちは芸術家となった。人間国宝も輩出している。ここ石川県立美術館で、北国の古都金沢の芸術制作、美術工芸の全容を知ることが出来る。（金沢市）

　第５福竜丸が被爆して大問題になった１９５４年のマーシャル諸島ビキニ環礁での核実験から４０年。いまだ残る問題の中、さらに核廃棄物処分場が建設されようとしている。奪われた南の楽園の現状を伝える。◆元乗組員の大石さんは、死んでいった仲間たちがみな肝臓ガンや肝障害であったことに不安をいだいている。ビキニ島ちかくのロングラップ島の住民は長年健康被害に苦しみ、ついに故郷を捨てて環境の悪い無人島に移り住んだ。１９９４年の健康診断でも成長障害や奇形、また多くの流産・死産が確認されている。その状況下、マーシャル政府は島の一部に核処分場の建設を計画しはじめた。

京都市の北西、上京区と北区にまたがる３キロ四方の西陣地区は織物の町として栄えてきた。昔、渡来人秦一族によって京都に織物技術がもたらされ発達したが、応仁の乱で失われた。乱ののちに西軍の将・山名宗全の本陣跡に機織り業者が集まり、京織物を再興したことから西陣の名が生まれた。西陣織に従事する職人は２万人を超す。糸屋、染屋、整経屋、紋図屋、織屋といった専門職が、大量の図案や糸、複雑な工程、精密な技術でこの産業を支えている。幾千万の糸が織りなす美を紹介する。◆西陣織各作業工程、山名宗全邸宅跡、小袖（江戸時代）、細帯（江戸時代）

吉川英治の原作を、川本喜八郎の人形で描く歴史劇「平家物語」の第３部。◆第３部「乱」編では“悲劇の武将”木曽義仲を中心に、義仲をめぐる女たちや源義経との最後の戦いなど悲運の生涯を描く。

何の問題もなかったはずの手術、しかし患者は麻酔から醒めず植物状態に陥る。責任を回避し続ける医師、医師に不審を抱きつつも見守ることしかできない家族。一人の患者をめぐって揺れる家族の絆を問いかける。原作：渡辺淳一（全１１回）◆４９歳の健康な主婦・邦子（高橋恵子）にとっては子宮摘出手術もさほど難しいものではないはずだった。しかし彼女は麻酔から目を醒まさない。夫・高伸（渡哲也）は、以前から密かに交際していた女性・恵理（檀ふみ）との板挟みになるが、妻の覚醒を望む気持ちに偽りはない。だが平穏だった家庭は徐々に荒廃し始める。

曽野綾子の長編犯罪小説「天上の青」のドラマ化。心理サスペンスタッチを基調に、殺人鬼の男と愛を信じられない女が求め合う究極の愛を描いた。（１９９４年１２月１２日～１２月１５日。全４回）◆雪子の誕生日に富士男はついに遺体遺棄現場を自供する。そして、事件発覚から半年、判決の日が近づいていた。第一審での死刑判決は確定だった。富士男の弁護を引き受けながらも達彦は、なぜ雪子がこんなにも富士男にかかわろうとするのかわからないでいた。そして予想どおり、死刑の判決が下る。控訴の手続きを進めようとする達彦に富士男は雪子へのメッセージを託す。「おれを愛しているか。もし、愛してくれているなら、控訴はしない」と。富士男はこうすることで雪子への思いに決着をつけようとしたのだった。その真意を知った雪子は…。

２１世紀には世界一の経済大国になるといわれ、世界の注目を集める中国。驚異的な経済発展と社会矛盾を同時に抱え、変革の波に洗われる中国全土を取材し、中国社会の深層を描くシリーズ。（１９９４年１０月９日～１９９５年９月１０日、全１１回）◆３度の失脚と復活を繰り返しながら、現在の改革開放路線を敷いた総設計師・?ｹ小平。生産請負制、経済特区そして社会主義市場経済と「中国の特色ある社会主義」政策を次々と打ち出していく?ｹ小平の戦略をたどりながら、改革開放の軌跡を描く。