システィーナ礼拝堂の天井画と、正面大壁画「最後の審判」との制作にはおよそ３０年の隔たりがある。天井画でルネッサンスの昂揚を高らかにうたいあげた巨匠がその間に見たものは、ルターの宗教改革運動を契機にヨーロッパ全土に広がった農民一揆、ペストの大流行、独仏領土拡幅戦争などの地獄絵だった。世紀末感が色濃く漂うこの時代を生きた彼は次の時代への期待を込めて、壁画の群像を神も人も裸体で描いた。しかし、時の教王は“腰巻き屋”と呼ばれる画家たちに命じて原画の腰部を覆い隠させたという。◆副音声は英語

落差１３３メートル、日本一の那智大滝。見るものに自然を超えた霊気を感じさせ、滝を神と結び付けた熊野信仰。院政時代の上皇たちの度重なる御幸から、やがて「蟻の熊野詣」といわれる庶民信仰へと移り、神の聖域として今日まで人々を引き付ける。那智の浜から南方浄土へ船出した補陀洛渡海の故事や、今なお続く大社の扇神輿と勇壮な那智の火祭りの盛儀を織り交ぜて、大自然と溶け合った神へのあがめと日本のふるさとの原形を見る。◆【重要文化財】三貌十一面千手千眼観音像〔補陀洛山寺〕◆【重要無形民俗文化財】那智の田楽◆【名勝】那智大滝

幾多の戦火をくぐりぬけてきたユダヤ人一家、イスラエルを「約束の地」と信じる彼らの暮らしを描く。◆イスラエルは１９４８年の建国以来、中東和平の焦点であった。ヨルダン川西岸地区ではユダヤ人入植地がパレスチナ人の村に隣接し、争いが絶えない。１９５１年に移住したアンスバッハさんはナチスドイツの虐殺を逃れた経験をもつ。家の壁には４世代の家系図が掛けられ、顔写真は年々増えている。国民を一人でも多くすることで国が強くなると多産が奨励されていることもあり、８４歳のアンスバッハさんにはひ孫が５６人もいる。

結婚式は華やかになっていく一方である。司会を頼まれてのエピソードを笑いでつづる。日常どこにでも転がっている話を、誇張したり、脱線したり、二人の話術でおもしろ、おかしく聞かせる漫才。結婚式にまつわる面白い話を、笑いの中で次々とくり出してゆく。

浪曲界の革命児といわれ、単なる寄席芸に過ぎなかった浪花節を、大劇場の芸にした桃中軒雲右衛門の話。師匠のつれ合いと駈け落ちをして東京に居られなくなり、地方で苦闘のすえ人気を得て九州から一座を率いて上京し、大劇場で興業を打つことになる。◆「桃源の風雲児」・作／榎本滋民・曲師／伊丹秀敏・太田英夫

山陽道第一の古社・吉備津神社は、岡山市と倉敷市のほぼ中間にある。本殿桧皮葺の屋根には、美しい２つの破風が並ぶ「比翼入母屋造り」で日本にここしかない神社建築の傑作といわれる。古代、吉備の王国は進んだ製鉄技術を持つ強国で、大和朝廷に対抗し華々しく戦いを挑んで滅んだ。これらについては今も『備中神楽』に伝承され、戦いの激しさを物語る。また釜鳴りの神事など古代からの奇妙な言い伝えを現代に受け止める里の風情を伝える。◆【国宝】吉備津神社本殿及拝殿◆【重要文化財】吉備津神社南随神門、北随神門◆【その他】備中神楽吉備津〔岡山県〕、鳴釜の神事〔吉備津神社〕

チャールズ・ダーウィンが進化論を唱えるきっかけをつくった、帆船ビーグル号の航海を追体験し、その後の地球がどう変わったか、どう変わってゆくかを問う全１１回の番組。第２回は、南米大陸北部のギアナ高地を訪れる。標高１０００メートルを超える切り立った断涯に囲まれた「テーブル・マウンテン」と呼ばれる台形の山々は、古くから「陸の孤島」といわれ、下界から隔絶されている。そのため生息する約８００種の生物の生態も知られていなかった。固有の生物の姿も次々に映し出される。

映像ドキュメンタリスト牛山純一と仲間たちの取材活動を紹介する。◆牛山純一とその仲間たちは、１９７９年１２月から翌年３月までアフリカ・ルワンダ共和国の北部山岳地帯で野生のマウンテンゴリラの生態を追った。マウンテンゴリラは世界中でもアフリカ中央部の山岳ジャングル地帯にごくわずかしか生息していない。１回目は、野生ゴリラの珍しい生態や野生ゴリラ研究に取り組む米人女性動物学者ダイアン・フォッシー博士の姿を紹介。