河竹黙阿弥の名作「三千歳」を鑑賞する。遊女三千歳と追手を逃れる直次郎の別れの愁嘆場である。没後１００年になる黙阿弥は、維新から西欧化の嵐の中で、座付作者として新作「源流奇譚西洋歌舞伎」やシェークスピア劇の翻案など、さまざまな試みをしていた。今日、一般に鹿鳴館の絵として伝わる絵画は、実は黙阿弥が下絵を描いたパリ・オペラ座前の風景であることが最近の資料で判明した。曾孫にあたる河竹登志夫が、激動の時代を生きた黙阿弥の創作活動を解説する。

明治の末の人気力士だった横綱、梅ケ谷の美談。梅ケ谷をひいきにしてきた幸助は、店が傾いても梅ケ谷を見るのだと無理をして振舞っていた。大家の長谷川が見かねて梅ケ谷に幸助のことを頼むが、相手にされない。長谷川は今に見ろと幸助を助け、立派な餅屋を開かせる。開店の日、祝いに来た梅ケ谷は先日の非を詫び、真意は甘えず奮起して欲しいためだったと打ち明け、持参の米と小豆で自ら餅をつく。この話が評判となり幸助餅は繁昌を続ける。

市川家に伝わる歌舞伎十八番、荒事の代表作である。スーパーマンの登場は江戸っ子の意気として大当たりを取った。◆悪公卿を前に、「しばらく」と声をかけて登場する主人公は独特の隈どり、かつら、衣装、大太刀などでスーパーマンを象徴する。市川家では“荒事は童の心でやれ”といわれているそうだが、見得も六方（東西南北天地を表す振り）も、無心の正義の強さを世界の隅々まで見せる勢いともいえる。◆副音声は英語

日本文学の名作を当代一流の演出家が２週連続で競作するシリーズ。一高生と踊り子の心の交流を描いた川端康成の原作を、恩地日出夫が演出する。◆川崎は旅芸人の一行と共に下田に向かった。道中、踊り子は「下田に着いたら活動写真に連れていって下さいね」と何度も川崎に頼み込む。彼はそんな踊り子の無邪気な姿をほほえましく愛しく思う。一行は下田に到着。川崎は約束通り活動写真に誘うが、踊り子にはお座敷がかかっていた。二人の身分違いの恋を心配した母親のお芳の配慮だった。踊り子は母の言葉を噛み締め、川崎に別れを告げる。

「東海道中膝栗毛」と落語「東への道」に依りながら、江戸・大阪からの参宮の道すじをたどる。遷宮特別企画。総合司会は森本毅郎。◆第五回「伊勢参りへの道　東海道編」。かつて多くは、農村で講を組織しての集団代参だったので、豊作と繁栄を祈願して、途中と周辺の神社仏閣に参詣。伊勢神宮が終着点になった。「弥次喜多」の立ち寄らなかった道中の箱根神社や清見寺など、あまり知られていない神社や寺、関所、本陣の今の姿、食べもの、名産などを見ていく。◆大阪からは、若手落語家たちが滑稽な道中記を追体験する。

ベトナムからトルコ国境へとアジアを東西に横断する“アジアハイウェー”。国連の提唱によって建設され、繁栄と平和の道となるはずだったこのルート上の国々の現状を描くシリーズ。（１９９３年４月２５日～１９９４年３月２７日放送、全１０回）◆第一集は、過酷な現代史を刻みこんだベトナム縦断２０００キロ。ハノイ～ホーチミン間を３昼夜で走る長距離バスに焦点をあわせ、米軍基地のあった土地や特別区などベトナム戦争が残した傷跡を通りながら、すし詰めの乗客たちの人生を紹介。ベトナムの素顔を描く。

江戸・化政期の名優三代目坂東三津五郎は、「浅妻船」「源太」など今日に伝わる多くの演目を振り付けし、坂東流日本舞踊の流祖とされている。番組では、後に大看板の十代目を襲名した円熟期の八十助（やそすけ）が、およそ１７０年前の初演時の錦絵や絵番付から復元して演じる、「武内宿禰」「網打」「申酉」の三演目を鑑賞し、演劇評論家渡辺保が歌舞伎役者・坂東八十助の魅力を語る。また、八十助が富岡八幡宮など深川界隈を訪れ、「永木格子」など三代目ゆかりの話題を披露する。

日本各地の特色ある小さな美術館を、豊かな自然と美術館の空間イメージの映像をまじえて紹介し、芸術家たちの作品の魅力とその楽しみかたを伝える。◆愛知県名古屋市の翠松園陶芸記念館、または唐九郎記念館は、昭和５５年６月の開設。８０年の生涯を作陶と研究一筋に打ち込み、織部や黄瀬戸などの復元に成功、また信楽や唐津の作品においても独自の世界をつくりだして海外においても高い評価を得た加藤唐九郎。その作品、研究資料などの保存・展示を目的としている。