仏教の誕生から滅亡までの歴史が刻み込まれた石窟遺跡アジャンター。長さ５００メートルに３０の石窟が、岩盤をくり抜いて作られている。◆王侯や商人に支えられ古代インドに平等主義をもたらした新興勢力の仏教は、釈迦の遺骨を納めるストゥーパと共に瞬く間に広まった。やがてヒンズー教にのみ込まれ消滅していく姿を、遺跡は克明に伝えている。

海外から移り住んできた“帰化動物”が氾濫し、日本古来の動物の生存を脅かしている。毛皮獣・ヌートリアや釣魚ブラックバス、ブラックマス、ニジマス、ザリガニ、ハクビシンなど大繁殖したものも数多い。これら帰化動物は食糧、毛皮、ペットとして輸入され、野生化してしまった動物である。豊臣秀吉の朝鮮侵略のとき、もたらされたというカササギを筆頭に、帰化動物の歴史と現状を紹介し、日本各地の自然環境の異変を人間とのかかわりを通して探る。

１９４５年（昭和２０）から八重山群島で爆発的に流行したマラリアは、軍の命令での疎開に原因があるとして、沖縄県は国に遺族補償を求めた。この「軍命」の存在を裏付ける史料を検証しながら、体験者の証言を交えて当時の悲劇を伝える。◆沖縄本島から南西に４５０キロ、青い海に浮かぶの美しいサンゴ礁の島々・八重山群島には、マラリアとの戦いの歴史がある。１６世紀初頭のオランダ船漂着以来、流行を始め、１８世紀には琉球王朝による開拓もマラリアに阻まれている。マラリア原虫を媒介するハマダラ蚊は山間部に多く、有病地として人は住まなかった。ところが１９４４年、石垣島に空襲があり、軍は戦争遂行のため住民に強制移住を命じた。結果として住民の１割がマラリアで亡くなっている。

　山口県萩市にある熊谷美術館は、毛利藩の御用商人として栄えた熊谷家の歴代当主が蒐集した古美術品を１９６５年に美術館として公開したもの。重要文化財に指定されている豪商の家屋や蔵が展示場になっている。古萩の陶器や、江戸期の書画骨董に見るべきものが多い。歴代主人のうち特に四代目は文化愛好者としてシーボルトとも親交を結び、六代目は幕末、維新の志士の支援者として活動した。

アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９３年３月９日終了、全１１回）◆第３回はフィリピン南端の小さな島・ホロ島。ホロ島は海洋王国「スールー王国」発祥の地であり、今もスルタンを名乗る王の末えいは「スールー王国」の存在を主張している。そして武装ゲリラ「モロ民族解放戦線」はこの島に解放区を作り、イスラム教徒の分離独立を叫び、政府と対立。３つの異なる勢力がしのぎを削っている。大統領選挙、ラマダーン（イスラム教の断食）を通してホロ島の今を紹介する。

『連獅子』は、能『石橋』から歌舞伎舞踊化された獅子物の中で、『鏡獅子』と並んで代表的な舞踊である。◆前半は狂言師の右近と左近が親と子に扮して踊る。親獅子が子獅子を谷底に落として試練を与える。後半は獅子の精が勇壮な毛振りをするところが見どころである。子獅子はゆったりと大きく踊れというのが七代目藤間勘十郎の教えであったと勘九郎は言う。親獅子は動きの少ない分、難しい。◆副音声は英語

徳川将軍家の剣術指南役として名をはせた柳生新陰流の剣法の心得を探り、現代的思考の上に剣豪が鍛錬した精神性を手繰る。上泉伊勢守・石舟斎・宗矩・十兵衛・兵庫助・連也など熟知の剣士が登場。真の新陰流の誕生を能の足運びとの関連などを引用するとともに、生と死が対決した剣という厳粛さを見つめ直す。相手の動きを利用する活人剣で、己に克つという言葉の中から現代に通ずる何かを探る。◆旧柳生藩家老屋敷、旧柳生藩陣屋跡、柳眼塔〔芳徳禅寺〕、天海僧正対座の図〔輪王寺〕、徳川秀忠画像〔徳川事務所〕、新陰流兵法目録〔宝山寺〕、兵法家伝書〔永青文庫〕

年間３００万人もの観光客が訪れる沖縄県。米軍基地と本土資本に依存する経済構造、サービス業が７割にも達する産業の偏りとゆがみ、リゾート開発による自然破壊、独自の文化を育んだ沖縄人の誇りなど、沖縄の本当の姿はあまり知られていない。「復帰してよかったか」「沖縄経済を発展させるには」「本土の人は沖縄を理解しているとおもうか」といった意識調査をもとに、沖縄県民の本音を探り、復帰２０年を迎えた沖縄の姿をリポートする。