謀略がうず巻く昭和初期の上海を舞台に、日中の抗争のはざまで引き裂かれた女の運命を描く。◆昭和１５年の横浜。ダンスホール“花迷宮”の女主人・月絵は若い頃上海にいた。一人住まいの月絵のアパート・月光荘を中国女性の愛鈴がひそかに訪れる。愛鈴は上海の日本情報組織の一員・清家中尉の愛人。清家は月光荘に部屋を借りており、愛鈴はまだ帰国しない彼をその部屋で待った。１年半ぶりに現れた清家は、蒋介石側近の宋学林が殺されたと月絵に話す。月絵と宋は子までなした仲であった。

リトアニアのユダヤ人画家ベン・シャーン。幼い頃ニューヨークに渡りアメリカ社会の底辺を知る。石版画工房で技術を習得、パリで絵を習い、町の本屋でみたリルケの「マルテの日記」で転機をむかえる。帰米後は社会派リアリストとして、時代性のある題材と人間性のある絵を描き続け、ビキニの第五福竜丸事件なども視野に入れるなど、激動の時代と格闘した画家だった。死の前年、最後の１枚として、長年絵筆を握り続けた自分の右手を描き残す。◆ベン・シャーン（１８９８～１９６９）「ラッキー・ドラゴン」１９６０、「これがナチの虐殺だ」１９４２、「農民にたずねよ」１９４１、「寓意」１９４８、「サンデー・ペインティング」１９３８、「らせんと結晶」１９５７

映像ドキュメンタリスト牛山純一氏と、文化人類学者の石川栄吉氏の解説を交えて、牛山氏と仲間たちの取材活動を紹介する。◆ソロモンの、「顔切り」儀式を中心とした出生から青年時代までの島の人々の生活と、酋長就任の祭事の記録。◆前半はソロモン諸島の島々を舞台に、南太平洋の伝統に根ざした生活を送る人々の姿を描いた。マライタ島の水上島でのお産で生まれた赤ん坊は、１１、２歳になると“セゲセゲ”という成人の儀式を受ける。これは部族の印である波や亀甲の模様を顔に彫り込み、部族の一員として正式に認められる儀式であるが、本人たちにとっては苦しい試練の時だ。◆後半は、東ソロモン、サンクリストバル島の、伝統的な酋長の就任祭事の記録。タワニの村では４年前に死亡した前酋長の喪が明け、ヤム芋やタロ芋の収穫を待って付近の村人を招待した一大パーティーが開かれ、新酋長の就任祭事が行われた。新酋長がこの催しをいかに綿密に計画・実行したかを記録し、その祭事の権限と一般の村民との関係、さらには社会の仕組みを考える。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「わたぼうし舞う」と題して、イギリスの保存鉄道・ワースバレー保存鉄道を紹介する。

１つの山が消えるほどの膨大な石で築かれたアンコール・ワットの遺跡。カンボジアのスールヤバマン二世が一歩でも神に近づくことを願って１２世紀半ばに建てた仏教寺院。高さ６５メートルの中央塔は天にそびえる立体構造で、回廊にはインドの叙事詩マハーバラタの神々の戦いの壁画がある。太陽の光を巧みに演出して神秘の世界へと誘う。インドの須弥山を模した５つの塔に、王の見果てぬ夢と朽ちることのない幻の都を見る。

日本オペラ界の生みの親で、“われらのテナー”とうたわれた藤原義江の生涯を、生前に交流のあった人々の証言や、記録フィルムで追跡する。◆１８９８年（明治３１）、下関のイギリス人貿易商リードと芸者阪田きくとの間に生まれ、偉大な音楽の才能に恵まれた彼は、新国劇、浅草オペラを経て、１９２０年（大正９）イタリアに留学、欧米各地で演奏活動を続けた。帰国後、藤原歌劇団を創設して日本オペラ活動の推進役となり、明治・大正・昭和の３代に渡って活躍した。

イギリスの探検家オーレル・スタインが敦煌で発掘した小さな断片から、広大な砂漠や険しい地域を克服して行われた文明交流の軌跡をたどる。◆中央アジア４万キロに及ぶ古代遺跡発掘の旅を続けたスタインによって明らかにされたシルクロード。楼蘭・敦煌などの往時の繁栄を探り、東西文明交流の壮挙に迫る。

湾岸戦争の開戦から約１ヶ月、日本ではこの戦争への貢献策を巡り国会で激しい討論が繰り広げられている。各政党の代表者や有識者がスタジオに集まり、国際社会での日本の役割を世論調査を交えて討論する。◆１９９０年８月２日、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸危機は、アメリカ中心の多国籍軍とイラク軍との武力衝突に突入、湾岸戦争が開戦した。戦況は多国籍軍優位に推移し、イラクのクウェートからの無条件撤退による停戦か地上戦突入かの山場を迎えている。前半では停戦の条件を無条件撤退とした多国籍軍方針への見解を各人が述べ、地上戦突入の場合の日本の役割や９０億ドルの追加支援、自衛隊機の派遣など多国籍軍への支援の是非を巡って討論する。