京都市東山区にある東福寺は、東大・興福両寺の１字ずつを取った由緒ある禅寺。室町初期この寺に、日本絵画史上比類のない名作を数多く残した画僧・吉山明兆（１３５２～１４３１）がいた。７年の歳月をかけて描いた日本最大の『釈迦涅槃図』や、下絵から丹念に仕上げた五百羅漢などの逸品。禅僧としての理想を貫き可能性に挑んだ、彼の心と筆致の妙を探究する。◆【国宝】東福寺三門、竜吟庵方丈〔竜吟庵〕、渓陰小築図〔金地院〕◆【重要文化財】東福寺伽藍図、聖一国師像、大涅槃図〔東福寺〕

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日～１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆反町茂雄：弘文荘代表取締役。

人間が色を求め色に執着する原点を、素朴な伝承民俗の中にみる。カリブ海パナマ運河の沖合い２００キロに４００に及ぶ小さなサンゴ礁の島、サンブラス諸島の、鮮烈な赤を基調に極彩色の衣装。古代マヤ文明が栄えたグアテマラ高原の美しいアティトラン湖周辺の青の村と赤の村。赤は血の色、生命力の根源という。メキシコの山村ドンルイス村では、荒波の太平洋岸へ下り命がけで巻貝を手に入れ、採色する。古来高貴の色とされてきた貝紫が今も伝わる。◆日光・東照宮陽明門、オアハカ村（メキシコ古都）、ミトラ遺跡（メキシコ）、パルミュラ遺跡（シリア）、アティトラジ湖（グアテマラ）、サンブラス諸島

「西遊記」の成立の秘密を、孫悟空のモデル探しを軸に探っていく紀行番組。大和田伸也が「西遊記」の舞台や背景となった中国のゆかりの地を訪ね、自然や文化を紹介する。さらに孫悟空誕生に影響を与えたと思われる「ハヌマーン」を追ってインドに飛び、その関係を検証する。遠い昔、中国とインドの交流の中から生まれたであろう「西遊記」の壮大なスケールと人間の営みの深さを描く。

日本の伝統芸、猿回しを復活させた“太郎・ジロー”コンビ。だが１９９０年の春にジローが病死してしまった。１１年間のパートナーを失った悲しみを越えて２代目ジローを育てる村崎太郎さんの姿を追う。◆１９７８年（昭和５３）周防猿まわしの会は猿回し芸を復活させ、村崎義正会長を中心に伝統芸を守ってきた。会の第一人者でありながら異端児でもある村崎太郎さんは、独自の猿回し芸に挑戦している。その太郎さんが１７歳のとき以来コンビを組んできたジローが急性肺炎で死んでしまう。その不幸をのりこえ、京都嵐山で餌づけされている猿の中から先代に似た猿をさがし、見つけたチビジローの調教をはじめる。

奈良県と三重県の県境にある大杉谷は、年間降雨量５０００ミリメートルという大台ヶ原の豊かな水をたたえながら原生林の間を走る大峡谷である。“関西の黒部”とも呼ばれるこの峡谷の美しさを紹介する。◆大杉谷の醍醐味は次々に展開する変化に富んだ景観にある。連続する滝と淵、激流と大岩壁、数々の吊り橋…。実に多彩である。上流から下流に向かうと、堂倉滝、光滝があり、数段に分かれた滝がそれぞれ滝つぼをもつことから名付けられた七ツ釜滝へとつづく。大杉谷は文字通り自生の杉林がうっそうと広がり、上流にはモミやツガが、下流にはシイやカシの林があり、植物相も見ものである。

石川の工芸の歴史について、嶋崎丞さん（県立美術館副館長）に聞く。◆石川県の文化の源は、江戸時代前期、前田利家に始まり、三代利常の時代に花開く。最初は武器類が多く、太刀や鎧のみごとな作品があるが、やがて茶人が指導するようになり、古九谷や飴細などの工芸品が登場する。◆百万石の武家が始めた文化だが裾野は広く、武士が解体した明治以後も発展してきた。九谷焼、輪島漆器などの研修所では、日本の金沢から世界の金沢を目指して、今日も懸命な取り組みが続く。

どうしようもない男と肝の座った元芸者の夫婦を描いた織田作之助原作のテレビドラマ化。◆西横堀の老舗の長男・柳吉（小林薫）は妻子持ちだというのに芸者の蝶子（黒木瞳）と深い仲。得意先の集金をごまかしたのがばれ、とうとう勘当されて蝶子と間借り生活をはじめた。生活は苦しく、蝶子は芸者より格は下でも稼ぎの良い“やとな”として働きはじめた。しかしそうやって爪に火をともすようにして貯めた金を柳吉は持ち出して遊びにつかってしまう。蝶子もとうとう愛想を尽かして家出した。しかし惚れた弱みで柳吉のもとに戻ってしまう。柳吉は心を入れ替えるどころか、妹が婿養子を迎えて店を継ぐと知って、ますますやけをおこす。