農産物輸入自由化を求める海外からの圧力が高まる中、重要な政治課題となっている「食糧」問題を３回にわたって考える。（１９８８年３月２０日～４月３日放送、全３回）◆第１回は、なぜ今米国が日本に自由化の圧力をかけてくるのかを分析する。かつて米国に食糧援助を多く受けていたＥＣや発展途上国が次々に自給を達成、その多くが食糧輸出国に変わった。農産物の慢性的余剰を抱える米国が、豊かな大マーケット・日本をターゲットとするその実態に迫る。

古くから日本で家系を象徴する伝統の文様、家紋。植物・動物・風景など森羅万象を写しとった多彩な図柄の華麗さ。平安貴族から武家社会、更に日本の隅々にまで浸透していったわが国特有の伝統風俗である。◆紋章上絵師は紋付の紋を手書きする職人で、その伝統的な工芸技術を脈々と伝えてきた。自然と人間の調和は日本人の心そのものであり、上絵師の妙なる技が今も支えている。

古希を越えてなお、漆芸の第一線で活躍している大場松魚さん。カメラは大場さんのち密な手作業を追う。大場さんは、文様に切り抜いた薄い板金を、漆を塗った器の表面にはりつける技術・平文の第一人者。下絵描きにはじまって金粉・銀粉蒔きまでいくつもの工程がある中で、器の曲面に板金の反りを合わせる＜なじませ＞が、「平文の作業の中で一番大事な仕事だと思っている」と、大場さんは語る。

李氏朝鮮王朝の血を受けて生まれ、日本化教育を受けて帝国軍人となっても民族の誇りを失わなかった李グウ（李?／グウは金へんに禺）の一生を追うドキュメンタリー。◆広島に投下された原爆では、韓国人も多く命を落とした。平和公園の対岸にある慰霊碑には、「李グウ公殿下以下二萬余霊」と刻まれている。李グウは朝鮮王朝最後の皇帝の甥として生まれ、日韓併合に伴う強制措置として幼いときに単身日本に連行された。日本では皇族に準ずる李公家の当主として日本人化教育を受けたのち、帝国陸軍軍人に仕立て上げられた。しかし彼は強い意思をもって韓国女性と結婚、民族の純血と誇りを守り抜いた。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日～１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第４３回は茶道・裏千家家元の千宗室さん（６４歳）。

日本初の原子力船として大きな期待を寄せられた「むつ」は、むつ市大湊港からの強制出航と放射線漏れ事故とにより、実験船としての役割を果たさないまま廃船と決定した。むつに振り回され続けた地元をはじめとする関係者の証言を伝えながら、原子力開発の現状を探る。

１９４２年（昭和１７）中国・内蒙古からチベットの首都ラサ（拉薩）まで６千キロの巡礼行を敢行した西川一三の足跡を４回にわたって紹介する、その最終回。◆海抜３７００メートル、富士山の頂上と同じ高さの所にチベット最大の都市ラサがある。宗教の本山であり、政治の中心でもある古都である。西川一三が修業を行ったレポン寺を訪ね、彼の恩師イシ・ラマの霊をとむらうため大法会を催す。全山約５００人の僧が参加して、荘厳に法会が始まる。

熊本県内各地で歌い継がれる「ふるさとのうた」を紹介するシリーズ（１９８８年４月３日～１９８９年３月１９日放送、全５０回）。『肥後シリーズ』は１９８６年日本民間放送連盟賞（放送活動部門）受賞。◆九州山地の山あいをぬって八代海に注ぐ球磨川。かつて球磨川は人吉と八代を結ぶ物資輸送の大動脈であった。川は荷を積んだ舟が行き交い、川面には船頭たちの歌う「球磨川船頭唄」が流れていたのである。