ポーランドの戦争博物館にある１体の日本人形から、その人形のモデルとなったオペラ歌手・喜波貞子の生涯を追う。◆その人形を作ったのはパビアック強制収容所で獄死したカミラ・ジュコフスカ、人形の名はタイカ・キワ。モデルの喜波貞子は、当時ヨーロッパで「蝶々夫人」を演じて人気を博していた。明治３５年横浜生まれ、１７歳の時に単身渡欧。日本ではほとんど知られていない彼女の足跡をたどって、デビューしたリスボンの劇場へ、そしてかつての共演者を訪ねてミラノへ、ニースへと追う。

７００万、８００万という発行部数を競う巨大新聞の間で、幅広い読者の支持を得て大阪にしっかり根付いている夕刊紙の世界を密着取材する。◆大阪の夕刊紙は現在７紙、総発行部数は２００万部。その中から二つの全国紙を除いた５紙がいわゆる大阪の夕刊紙、各紙とも市民の目の高さを重視した気取らない紙面づくりを目指す。ハイテクに流れず、手作りの味を残して大新聞にはない魅力を発揮している。そこで働く編集者や記者を取材し、その人気の秘密にせまる。

さまざまな産業から出る廃棄物。とりわけ有害性の強い廃棄物の処理については先進国の全てが頭を悩ませつつ対応に動き出そうとしている。その中で日本の有害廃棄物の基準や処理の実情とその問題点、将来への対応策を考えるシリーズ。（１９８９年２月８日開始、全２回）◆国連環境計画をはじめ、世界は有害廃棄物の新たな規制に動き始め、厚生省も国内基準の再検討を始めた。日本の大手商社はアメリカの巨大処理会社と提携して有害廃棄物処理の分野に進出しようとしている。望ましい処理はどうあるべきか、その実現性はどうかを考えていく。

俳優であり画家でもある米倉斉加年さんが、江戸時代初期の風俗画の傑作「彦根屏風」と「松浦屏風」を紹介、町人文化の興隆期の華やかで自由なデザインの美しさを伝える。◆現代の浮世絵を目指すという米倉さんが最も心をひかれるという彦根屏風は、彦根城主であった井伊家の家宝として伝えられた。当時の流行の最先端の装いをした伊達男、洒落女など１５人が生き生きと描かれている。◆また肥前浦戸の松浦家に伝わった松浦屏風は、１８人の遊女とその豪華な衣裳を徹底して描きこんでいる。鹿の子絞り、金糸の刺しゅうなど、当時のデザインの自由さや高度な技術まで見て取ることができる。

定年を迎えたばかりの初老の夫婦が、息子の結婚相手と突然同居することになる。戸惑いながらも受け入れた二人は、やがて彼女の連れ子に昔亡くした娘の姿をしのぶようになる。◆信二と国子の夫婦は、長女・希和子、長男・洋太郎と二人の子どもを育てあげ、第二の人生を始めようとしていた。そこへ、幼い女の子を連れた冬子という女が訪ねてくる。続いて現れた洋太郎は、彼女と結婚するつもりだと言う。そして明後日から２週間のアメリカ出張の間、彼女をこの家に置いて欲しいらしい。信二は気乗り薄だが、二人は同居を始める。

１９８９年８月１９日、日中の山男１１人が中国甘粛省の未踏峰阿爾金山（５７９８ｍ）の初登頂に成功した。未知の山を目指して日中の山男たちがくりひろげる人間ドラマを軸とした自然紀行、ヒューマンドキュメンタリー。◆日中合同登山隊のメンバーは秋田側２３人、中国側１６人で大半のメンバーが５０００ｍ級の山は未経験。ベースキャンプでの高度順応訓練、ルート工作、荷上げなど不安だらけの中で、登山隊は言語、習慣、民族の違いの壁を乗り越えて一歩一歩山頂へと迫る。

世界中の人々の暮らしぶりや自然を紹介する、海外取材ドキュメンタリーシリーズ。全米写真家協会プロフェッショナル最高賞を受賞し、国際的にも評価された。（１９６６年１０月９日～１９９０年９月１６日、全１０００回）◆ハイランド（高地）の中央にあたるワギ谷は、北と南を山岳に挟まれた東西に長い盆地である。ワギ谷を貫通するハイウェイ沿いのミンジで、取材班は部族戦争に遭遇した。戦争見物の人々が集まる平野から、戦場となる山の斜面がよく見える。男たちは、身の丈ほどもある大きな盾をかざした前衛を繰り出し、後ろには弓矢や木の槍で武装した男たちが続く。まさに、戦国時代さながらの光景である。

天平時代、奈良・東大寺の大仏建立が行われていた時期に、もうひとつの仏像が完成した。良弁による三月堂の不空羂索観音である。人をすべての災いから救うというこの観音を、作家・陳舜臣さんが訪ねる。◆奈良の都を襲った疫病、天災などを仏の力によって鎮めるため、大仏建立が始められた。しかしこの国家鎮護の大事業によってかえって民衆の苦しみは増すことになり、大仏建立の責任者だった僧・良弁は心を痛めた。そして民衆救済の中心として三月堂を建立する。◆堂内の９体の仏像すべてが国宝という中で、ひときわ大きくそびえる本尊・不空羂索観音。手に持つ縄（羂索）は、投げ打たれれば網となり、必ず苦しむ人を救うとされている。