江戸時代、１７万石の城下町であった川越市。度々の大火で町には蔵造りの商家が建ち並ぶ。その中に、明治に改築されて以来、時を知らせる鐘のやぐらが目立つ。鐘のつき手がいなくなり今は自動化されているが、鐘の音色は市民の心に響く。路地裏の下町風情が残る手づくり菓子屋。みこし祭りの原形とされる『まんぐり』が、入間川で悪魔払いをする。江戸の面影を色濃く残す川越市の梵鐘を中心に、町の営みをつづる。◆まんぐり〔埼玉県〕

秋、北海道の川に北太平洋での４年におよぶ長旅を終えたサケの大群が戻ってくる。今、日本の川に帰ったサケは全て、人工ふ化事業のために捕獲される。撮影班は、人間の手の及ばない知床最深部に自然産卵するサケを追う。きびしい冬を河床の砂礫の下で過ごした稚魚は、春に川を徐々に下って海へ向かう。ふ化場からも多くの稚魚が放たれる。しかし川には多くの危険が待ち受けている。再び母なる川に戻れるのはほんのわずかだ。

山陰の小京都といわれる津和野の人と風土を、『鷺舞』を中心に描く。◆その昔、京の都から鷺舞神事が渡った町、津和野。京のみやびの文化を受け継ぎ、旧家の屋根にも鷺の作りものが上がる。京都祇園から社を招いた弥栄神社が津和野川のほとりにある。毎年７月２０日と２７日に古式に従って鷺舞神事が奉納される。白鷺に化身した２羽が人々の安らぎを祝って神社で舞い、町を練ってまた舞う。◆【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財】弥栄神社の鷺舞〔島根県〕

油屋の二男坊・与兵衛と隣家の内儀・お吉の悲劇を描く近松浄瑠璃の代表作の一つを、テレビドラマに初挑戦する富岡多恵子が脚本化。あえて古典に挑戦、そこに現代の息吹きを通わせる。◆大阪・本天満町の油屋・河内屋の与兵衛（松田優作）は大変な放とう息子。遊び尽くしたあげく勘当され、河内屋から追い出される。金に困った与兵衛は、隣に住む豊島屋の内儀お吉（小川知子）に借金を申し込む。

伝説の１つに、６世紀の中ころ東ローマ帝国の首都コンスタンチノープルに２人のキリスト教徒が姿を見せた。２人の手にした杖の柄の中には、中国で門外不出とされていた蚕の卵が隠されていた。以来養蚕はトルコ西部の町プルサで発達を遂げ、トルコは世界屈指の絹織物の生産地となった。１５世紀の隊商宿で現代の絹取引が行われるこの地方には、はるかな過去と現代が自然にとけ合う古今交易の場が残る。◆オスマン廟、コザハン

岐阜県揖斐郡徳山村。山を越えると福井県。この山里にはトチもちを作る習慣が残っていた。少し前までの主食はヒエ、アワ、サトイモそしてトチの実だった。トチもちをつくのは晴れの日の祝いもちがやっとのことだった。トチの実割りからもちつきまで昔ながらの製法を追い、自給自足に生きた山村の人々の知恵と、環境への適応ぶりを見る。（取材後、徳山村はダム造成のため水没した）◆徳山村〔岐阜県〕

えん罪を晴らした後、社会復帰した免田栄さんの生活とその証言を軸に、えん罪事件の起こる構図と無罪が証明されるまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。◆免田栄さんは、日本初の死刑囚に関する再審裁判（免田事件）の被告だった。２６歳から５７歳半ばまでを獄中で恐怖を背負って生き抜いた。◆戦前の自白強要の思想が残る中で起きた冤罪事件は数多い。

だれもが持つ古き良き故郷への郷愁。その思いとは裏腹に、地域の姿とそこに暮らす人々の生活は、時代の変化とともに変貌する。このシリーズは、中国地方５県（岡山、広島、鳥取、島根、山口）の特色ある地域を選んで故郷の今と昔を描く。中国地方ＪＮＮ系列４社（山陽放送、中国放送、山陰放送、テレビ山口）共同制作、放送番組センター協賛番組。◆広島県尾道市は中世から流通、商業の拠点として発展した。江戸時代には北前船の泊地として繁栄を極め、多くの文人墨客が訪れて文化の拠点となった。住吉浜には当時からの主要産業である海産物取引の浜問屋が軒を並べ、造船と並んで現在も尾道の経済を支える。これら商人たちの遺産とともに、尾道には一流の文化人、芸術家を育てる伝統も生きている。毎年１１月には、長く尾道に住んだ画家・小林和作を偲ぶ美術展・和作忌が開催され、市民参加の美術展が開催される。尾道の日常の風景をこよなく愛す画家・中村琢二さんも出品者の一人である。画伯は、風光に恵まれ文化遺産にあふれる尾道を日本に類のない街と評し、その風景を絵に残している。