離婚から２７年、人生の秋を迎えた男女が、一人息子の死を目前に再会。二人は初めて家族の絆の重みを知る。◆宮島鉱造（笠智衆）は、２７年前に他の男のもとへ走った妻・タキ（杉村春子）と離婚し、今は蓼科の別荘に独り暮らしをしている。ある日、一人息子の隆一（杉浦直樹）がガンであと３カ月の命と知らされて上京。隆一の家でタキと再会し、追い払おうとするが「お父さんに何ができるの」と逆に詰め寄られる。つき離したものの、８０歳を過ぎても息子にろくな言葉ひとつかけられない自分に気づくのだった。◆「老いと死をみつめ、人生の秋をしみじみと」

人間はどのくらいの大きさの魚まで釣り上げることができるか、その限界に挑戦する釣り師たちの魚と人間との闘いを描く。◆記録を狙うなら奄美大島といわれるように、名瀬港には大物を狙う釣り師たちが集まってくる。カメラはひたすら釣り師と釣りそのものを追う。三重県熊野灘でのカジキのトローリングでは、壮烈な闘いのすえ３メートル、１２０キログラムもの大物をしとめる。

中国最大の自動車メーカー「第一自動車」（吉林省長春市）が、１９８７年１月、新型車「解放」の生産を開始した。操業以来実に３０年ぶりの初のモデルチェンジである。市場原理の導入という経済改革を進めている中国では、巨大メーカーが激しい販売競争を繰り広げている。「第一自動車」の経営陣はモデルチェンジでライバルメーカーを圧倒し、さらに増産と品質向上をねらって生産現場の改革に踏みきった。実績に応じてボーナスを支払う新しい賃金制度、日本流のＱＣサークル運動など、変ぼうする中国産業界の最前線を徹底取材。

日本絵画史の第１ページを飾る銅鐸絵画に強くひかれるという作家・ニコルさんが弥生時代の狩人たちの心を思う。◆銅鐸は弥生時代に造られた釣り鐘形の青銅器。楽器として、また祭祀の道具として用いられたと考えられる。１９６４年（昭和３９）、神戸市灘区桜ヶ岡町から１４個の銅鐸と銅矛７個がまとまって出土した。この銅鐸の多くは弥生時代特有の文様で埋めつくされていて、一部の銅鐸にはトンボ・クモ・カマキリ・カメなどの動物や、イノシシを追いシカを射る狩人が細線で生き生きと描かれている。◆「部族の生き残りをかけた激しい戦いの時代、狩りと自然を愛した弥生人の祈りが込められている」とニコルさんは語る。

自然を巧みに取り入れて建造された浄土寺を作家の安西篤子さんが訪ね、阿弥陀来迎の荘厳な美の世界を体験する。◆浄土寺浄土堂の１９５７年（昭和３２）から１９５９年にわたる解体修理によって蔀戸（日光をよけ風雨を防ぐために格子の裏に板を張った戸。今の雨戸に当たる）が現在のように復元されるまでは、浄土堂の西側は板壁で覆われていた。この蔀戸を開け放つと西日がふんだんに差し込む構造で、落日のころ堂内は朱と金色の光に包まれて阿弥陀三尊の体が隅々まで浮かび上がる。それはあたかも金色の阿弥陀三尊が現世に来迎したかのような不思議な感動を見る人に与える。

世界で最も権威ある賞といわれているノーベル賞。その受賞者がどのようにして決定されるのかは、これまで秘密のベールに包まれていた。３年越しの交渉の結果、ノーベル財団はＮＨＫ取材班に対して内部の撮影や関係者のインタビューを初めて許可した。１９８７年、ノーベル医学生理学賞には利根川進さんが選ばれた。番組ではその受賞をケーススタディに、１０年以上もかけて有能な学者の業績を見守ったり、世界中に調査員を送り込みその業績を徹底的に調べあげるという受賞者決定のメカニズムを明らかにするとともに、１９０１年の第１回受賞者発表以来、ノーベル賞が果たした役割を紹介する。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日～１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第２０回はホテル・オークラ名誉会長、野田岩次郎さん（９０歳）。

ディビッド・ハルバースタム著「覇者の驕り」を原案とし、日米の自動車産業の興亡の歴史をたどるドキュメンタリー。４回シリーズ。（１９８７年６月２２日終了、全４回）◆第１回は、２０世紀初頭から１９５０年代までの時代を描く。２０世紀初頭のアメリカで、自動車文明を決定づける二つの出来事が起こった。デトロイトでヘンリー・フォードが自動車会社をおこし、テキサスで世界一の油田が発見されたことである。フォードは流れ作業による量産システムを考案しフォード社は世界一の企業へのしあがっていった。デトロイトの興隆を描き、あわせて日本の自動車産業の揺らん期を描く。