臓器移植と深いかかわりをもつ「脳死」の問題。長いこと心停止をもって人の死としてきた日本社会に、医療の進歩が生命観の変化を迫っている。移植先進国アメリカと比べつつ、論議が高まり津つある日本の現状を示す。◆１９８８年（昭和６３）日本医師会生命倫理懇談会は、脳死を人の死であるとした最終報告を発表した。“脳の不可逆的機能喪失”をもって死とする脳死の判定基準は「深い昏睡」「自発呼吸の消失」「瞳孔散大」などの条件が６時間以上満たされていること、とされる。

冬なお暖かい温泉の街・湯河原を訪れ、静かな街並みと人びとの暮らしを伝える。◆神奈川県湯河原町は静岡県に接し、箱根の外輪山と相模湾に囲まれた温泉地である。静かな佇まいの街並み、万葉亭、文豪や歌人が逗留した宿、また、町を流れる千歳川、土肥城跡の城山などを紹介する。他に、湯河原みかんのとり入れの様子、夕方の芸し芸妓さんたちの出勤、福浦漁港でのせり風景、カマスの干物づくりなど、温泉街の様々な暮らしを紹介。

作家・井出孫六さんが初夏の国東半島を訪れ、富貴寺大堂をたずねる。◆国東半島に仏教が伝えられたのは奈良時代。その険しい山々は、人々の厚い信仰心を養ってきた。平安時代の末、戦火が相次ぎ人身が荒廃する中、浄土を願う欣求浄土の思想が流行。富貴寺大堂もこうした浄土思想に基づいて建てられた。◆「僕は今まで中世に対してとかく貧しく暗いイメージを持っていましたが、ここに座って当時を想像してみると、豊かな、そして浄土への憧れという国東の民衆の精神世界が思い浮かびます」。９００年を超える富貴寺大堂の歳月を目のあたりにした井出さんは、本尊の前に座して感想を述べる。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日～１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆長嶺ヤス子：舞踊家。１９３６年福島生まれ。河上鈴子に師事。スペイン舞踊を基に、邦楽などとの共演による創作舞踊を発表。主な作品に「娘道成寺」「鷺娘」など。１９８０年芸術祭大賞受賞。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日～１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第７２回は太陽神戸銀行名誉会長・河野一之さん（８１歳）。

四国の四万十川を舞台に、ひ弱な少年がひと夏で成長していく姿を詩情豊かに描く。◆四万十川のほとりの山あいの村。病気をして以来無気力な父（小林稔侍）に代わって母（泉ピン子）がきりもりしているよろず屋の次男・あつよし（伊崎充則）は体も弱いが気も弱い。転校してきた貧しい家の娘千代子（吉村淳）がいじめられても、あつよしはかわいそうに思いつつも止めることができず見ているだけだった。しかし姿を隠した猫をさがすのを手伝ってくれた千代子に、あつよしは淡い思いをよせるようになり、いじめられる千代子をかばう勇気をもてるようになる。

四方を山に囲まれた甲斐に生まれ、あと１０年生きていれば天下をとれたといわれる武田信玄。本音の生き方を求めて肉親や家族との間で悩みながらも、人材育成や領国経営に近代的な手腕をふるったその生涯を描く。ＮＨＫ大河ドラマ第２６作の総集編。全５回。原作：新田次郎。◆第４回「二重の死」。信玄（中井貴一）と嫡男・義信（堤真一）との確執が表面化しはじめた。甲斐を強くするためには手段を選ばぬという信玄と、潔癖な息子。義信に「父を葬る」と聞かされた傅役・飯富兵部（児玉清）は、信玄を狙うが果たせず切腹。幽閉された義信も自害する。甲斐では三条の方（紺野美沙子）が病に冒され、息を引きとる。ひたすらに三条の方を守ってきた八重（小川真由美）も遺体の前で胸を突いて後を追う。

大分県日田市の山中にある皿山。戸数１４、７０人が肩寄せあう集落。日常雑器の陶器を江戸期に開窯。以来３００年ほとんど変わらぬ陶技を今日に伝えている。この素朴で美しい陶器を見出したのは、民芸運動の父・柳宗悦である。山深い里で、自らの美しさを知らずに風雪に耐えてきた小鹿田焼は、美術品でも骨とう品でもない健康的な美しさとたくましさが評価された。里人のきずなと陶芸を追う。