貧困の中で美しく花開き、花の盛りに夭折した“時代の天才”樋口一葉の鮮烈な青春を描いた全５回のドラマの第１回。１８９１年（明２４）、歌塾「荻の舎」発会の席に貧しい夏子（大原麗子）の姿もあった。師・歌子（久我美子）の代げいこをするほど和歌に優れた才を持つ夏子だったが、一家の生活苦は目を覆うほどだった。そのころ、和歌の先輩格で元老院議員の娘・竜子（二宮さよ子）が小説で大成功したことを知った夏子は「身分はともかく才能では負けない」と、自分も小説を書く決意をする。そして妹の邦子（大場久美子）の友人の紹介を得て、朝日新聞の作家・半井桃水（石坂浩二）に弟子入りした。

『奥の細道』文中のエピソードや名句の数々を盛り込みながら、俳聖・松尾芭蕉の旅をたどる。芭蕉に扮するのは長門裕之。江戸を出発した芭蕉と曽良（長谷川哲夫）は、日光、白河関、松島、平泉などを経て山形県に入り、尾花沢、立石寺、最上川、月山、羽黒山、内川（鶴岡）、酒田などの歌枕を訪ねる。二人は歩くだけでなく、電車にも乗れば、現在の旅籠であるホテルにも泊まるという、ユニークな旅。『奥の細道』を通して、山形の過去と現在が交錯する。

呉服座は、明治初年、現在の大阪府池田市に建てられた代表的地方芝居小屋である。“池田の豆芝居”と言われ、昭和４６年に明治村に移築されるまで、豆芝居は１００回近くも続けられ、約１世紀にわたって人々を楽しませた。木造二階建、切妻造りの２階正面には太鼓櫓があり、舞台は手動式回り舞台である。また、見事な石造りの奈落や当時の観客席も、劇場の佇まいを今日に正しく伝えている。呉服座に鳴り響いた一番太鼓と拍子柝の音で往時の舞台を振り返る。◆呉服座

奇跡の経済復興といわれる“日本の戦後４０年”は、一体どのようにして実現したのか。戦後日本を訪れたアメリカの経済視察団の報告は“この国は２度と再び工業国家に立ち戻ることはないだろう”と書き記している。いま世界中に洪水のように工業生産物を輸出する日本。国家近代化の実験室と呼ばれた日本。その４０年の歩みを振り返り、これからの日本の進むべき方向を示唆する。◆第１部「廃虚の中から」では、終戦から東京オリンピックの１９６４年（昭和３９）までをドキュメントで構成する。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第３回は「もう一人の私」。住みこみの家政婦は、夫が女と出て行き、子供は姉に預けていると云っていたが、ある日出ていったきり戻らなくなる。夫とよりを戻したのかと思っていたが、近所の人の話ではむしろ彼女のほうが男好きなのだという。そういえば、夜中に手洗いに行ったとき、浴室から出て来た彼女が意味ありげに歩いていった事があった。あれは私を誘っていたのか、それともそんなことには縁のない男と思ったのか、と私は考えるのだった。

北海道のほぼ中央、十勝山系富良野岳の裾野にひろがる富良野の森。そこにある東大北海道演習林で、４０年余り森を見守り続けているひとりの老人がいる。「どろ亀さん」とみずからを呼び、人にも呼ばれる東京大学名誉教授・高橋延清さん。森林研究一筋に生きてきた人生を、彼を“森の師”とあおぐシナリオ作家・倉本聰さんの目を通して描く。

ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日～８月９日放送、全５回）◆第一回。朗読する作品は「鮒」。不倫相手の男の台所に、二人で飼っていた鮒を置いて恋の清算をする作中人物の奇妙な行動と心の動き。夏子は自分の境遇とダブらせて、今は亡き作者に語りかける。

貧困の中で美しく花開き、花の盛りに夭折した“時代の天才”樋口一葉の鮮烈な青春を描いた全５回のドラマの第４回。夏子（大原麗子）の一家は下谷竜泉寺町に移り、子供相手の小さな雑貨屋を開いた。吉原遊廓に依存して生きる貧しい町だった。そこに生きる人々の暮らし、遊廓の勝ち気な美少女・美登利（仙道敦子）と竜華寺の息子・信如の淡い恋を目撃しつつ１年ほどをすごす。だがその間も貧の重さは容赦なく、久しぶりに会った歌子（久我美子）から竜子やひろ子が歌人として門を興こしたと聞いても、夏子は悔しさをかみしめるほかない。切羽つまった夏子は相場に手を出すことさえ考える。