美しい色漆を塗り、重ねて文様を彫り表わす彫漆。彫漆家として頂点に立つ音丸耕堂は、老いてますます盛ん。米寿祝いに新作展を催す。◆１９４２年（昭和１７）文展に特選。以来特選に名を連ねる。日本画を本格的に学ぶが、３３歳のとき重病にかかり、余命いくばくもないと宣告されるなど、病魔と戦いながらの創作活動だった。すべての作品に極上の文様を表現。完ぺきを永遠のテーマとして彫り続ける。

８年前に婚約しながらなぜか結婚に踏み切れない男女と、今まさに婚約しようとする若いカップルがそれぞれに入り乱れる。シリアスな問題である「婚約」をめぐるコメディ。（１９８７年１月１０日～２月７日放送、全５回）◆ＦＭラジオ局の編成局長・加納一馬（山城新伍）と、「クラシックサロン」という番組のＤＪ・保科レイ子（秋吉久美子）は婚約者どうし。結婚に踏み切れないまま８年という月日が経っていたが、一馬の母が急死して多額の相続税がかかってきたこと、また「クラシックサロン」をやめて歌番組にしたいという番組編成上の都合から、一馬が結婚を迫り出す。魂胆を見抜いたレイ子は婚約解消を申し込むが、一馬は承知せず、かえってレイ子が困って泣きついてくるように裏から手を回す。

個性派パフォーマー・イッセー尾形の、涙が出るほど面白い反面どこかほろ苦い“ひとり芝居”を紹介する。◆イッセー尾形が演じるのは、風采の上がらない中年サラリーマン、売れそうにもないアイデア商品のブローカー、愛想がいいだけの評論家など、いずれも都会に生きる典型的な現代人ばかり。いかにもありそうな芝居に大笑いした後に、ふと身につまされるような怖さ、毒を含んでいることに気づく。

アメリカ製の地図に記された北方領土問題の注釈から、地図にこだわって取材をし、世界から見た北方領土問題を考える。◆サンフランシスコ在住のレポーター服部まこは、書店で手にしたアメリカ製地図に北方領土問題の注釈があるのを見付けた。以前に購入した地図では単に“ソ連領”扱いだった。ノルウェー、西ドイツ、フランスと取材の旅をつづけるうちに、単に地図表記の多様性だけでなく、国と国との境界線をめぐる紛糾や大国の利害のはざまでの民族の悲劇、北方領土問題の起源に関するアメリカの役割などが見えてくる。

金属細工・彫金の技術は古墳時代に既に見られ、その源は古代エジプトといわれる。◆各種の技法の中でも、目切りの技法は鹿島家伝来のもの。鏨と金づちを用いて、地金に縦横斜めと細い布の織り目のように切り込んでいく。◆東京・下町で帯留め、かんざしなどをつくり生計を支えた経験のある鹿島一谷は、おう盛な研究心によって装飾を芸術にまで高めた。

徳川の大坂城攻めに参戦しなかった家康の六男・松平忠輝。彼の悲運な半生を描く。原作・脚本：池田一朗。◆かつて越後高田７５万石の藩主であった松平忠輝（松平健）は、大坂城攻めに参戦しなかったため領地は没収、流罪となっていた。その期限が切れる１０年目、兄・徳川秀忠（大出俊）の命を受けたと思われる柳生の隠密に襲われた。忠輝は兄の真意を正そうとご法度を破り、流罪の地・飛騨高山から一路江戸城へむかう。だが柳生の忠輝に対する攻撃はし烈を極めた。自由かっ達で人をひきつける不思議な魅力を持つ忠輝。家康亡きあと自分の息子・家光を将軍にたて、徳川時代の盤石の基礎をつくろうとする秀忠。２人の骨肉の争いは続く。

雲霧仁左衛門（松方弘樹）は名うての大盗賊。火盗改方にとっては、十数年末の仇敵だった。その仁左衛門が江戸に舞い戻ってきた。狙っているのは、以前から目を付けていた札差・越後屋の金蔵だ。そのための裏工作には手を尽くした。越後屋に滞在している名古屋の豪商・松屋（財津一郎）にも自分の女であるお千代（浅野ゆう子）を近づけ、次の仕事の準備も怠りなかった。ところが、買収して役人の動きを報告させていた与力の岡田（横内正）が裏切り、仁左衛門の隠れ家を急襲した。その日仁左衛門は、警戒する火盗改の裏をかいて、かねての計画通り越後屋から３万両を盗み出す。原作：池波正太郎。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日～１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第３回は日本将棋連盟会長・大山康晴さん（６４歳）。