かつてネパールで密教修行の経験を持つ宗教学者・中沢新一さんが、真言密教の寺・東寺（教王護国寺）を訪ねる。◆東寺には、５０点の国宝がある。寺の中心・講堂の２１体の仏像は平安初期、空海が仏師に造らせたもの。このほか寺には空海が密教を広めるため中国から持ち帰った大量の図像や曼陀羅が納められている。ここを都で布教するための拠点とした空海は、やがて本来の山岳仏教に帰り高野山へ去る。しかし不動明王を始めとする東寺の仏たちは、密教の教義を超えて日本人の心をとらえ、今も人々の厚い信仰を得ている。

１９８６年（昭和６１）１１月１０日、天皇陛下御在位６０年を記念する金貨が発行される。額面は１０万円、日本では５４年ぶりの金貨発行であった。金貨のデザインは、平山郁夫画伯が描く「鳩と水」の絵で、日本の豊かな自然を表している。このデザインに決定されるまでには、記念貨幣としては異例の審議会が設けられ、２０数案のデザインが検討された。原案の中には、天皇の肖像も含まれ、その原画と肖像の使用をめぐるさまざまな秘話があった。国際金融市場の実態を含めて伝える。

６５歳以上のお年寄りがついに全人口の１０パーセントを突破し、激増する認知症や寝たきりの老人に対する介護がより必要になってきている。これらの老人を介護する体制の問題点を明らかにしていく番組。（全４回）◆１回目は、認知症や寝たきりの老人を預かる特別養護老人ホームや老人専門の病院の実情をリポート。

北海道の山が「夢の大地」として都会の人たちに売られている。そこには、戦後開拓者たちが老い、後継者もないため土地を手放さなければならない現実がある。一旦都会の人たちの手に渡った山は細分化され、時価の百倍もの価格で転売される。投機のため一片の証紙として都会を漂泊するのである。その間、山は手入れされることもなく、植林のあてもなく、ただ笹のはびこるところとなり、荒れていく。

福岡市に住む洋画家寺田健一郎さんは、再発ガンのため５４歳で早逝した。直腸ガンの摘出手術をうけてから４年目のことだった。直腸切断から社会復帰、そして再発から死への４年間を克明に追う。◆死の半年前から焼けるような熱さを伴う温熱療法を受けた寺田さん。家族はいたたまれず医師に中止を訴えるが、寺田さんの生きようとする強い意思が再び治療に立ち向かわせる。寺田さんは死の数日前まで「絵の具の匂いが薬たい」と笑い飛ばしながらベッドの中で絵を描き続けた。

神戸大学西蔵学術登山隊が初成功したクーラカンリ登頂に、取材班が同行。登頂活動とチベット高原の自然を紹介する。◆クーラカンリ峰（７５５４メートル）は中国チベット自治区とブータンの国境近くにそびえる、未踏の山としては世界第２の美しい高峰である。この聖域に、神戸大学は１９８６年３月から３ケ月にわたって学術登山隊を派遣、見事登頂に成功した。

新緑の鞍馬山に作家の高城修三さんが毘沙門天を訪ね、鞍馬独特の神秘的な雰囲気の中にその魅力を探る。◆毘沙門天は四天王（仏法を守護するインドの神である持国天・増長天・広目天・毘沙門天の総称）の一つで、「多聞天」ともいわれ、北方守護の武神として崇拝されている。日本での信仰は全国的で、鎌倉末期にはすでに七福神の一つに数えられ、特に鞍馬寺のものは著名である。「表情が良いし、動きもある。こうやって向きあっているとすごい力を感じる」と高城さんは語る。

ＮＨＫとフランス・テレビ１（ＴＦ１）との共同制作により、世界最大級の美術館・ルーブル美術館の全貌を紹介するシリーズ。（１９８５年４月２８日～１９８６年４月２０日、全１３回）◆第１２回は、革命前の１８世紀フランスに花開いたロココ美術を紹介する。典雅な画風のなかに哀愁を漂わせ、ロココ時代の開幕を告げたバトーから、奔放な筆致と鮮やかな色彩でロココ芸術の最後を飾ったフラゴナールまで、優雅で繊細な貴族趣味の世界を描く。