かつては闇の支配する時間であった夜。ろうそくと灯心の明かりだけで行われる「夜咄」は、寒さの厳しい冬の夜に２時間以上をかけて行われる。遠州流の長い伝統に則り、名のある道具を揃えて薄明かりの中で息を散らさず一心に茶に向かう、凝縮した時間をテレビカメラが映し出す。幕府の要職に就き、茶の世界でも大成した遠州、その晩年の茶室「忘筌」に込められた茶の心、独自の美意識を探り、近江出身の武家文人の生涯をたどる。◆【重要文化財】忘筌（大徳寺孤篷庵）【その他】瀬戸茶入飛鳥川、高麗茶碗夢の字、オランダ茶陶薄藍地半筒茶碗

最近の医学の進歩で、何もわからない受け身の存在だと思われてきた赤ちゃんの驚異的な能力が明らかになってきた。胎児の時代から出産時、出産直後のすばらしい能力を斬新な映像で綴る。◆ひとりの赤ちゃんと母親の産前産後に密着取材。おなかの中でしきりに動く胎児は、この運動によって複雑な神経や身体の仕組みを発達させている。母体に陣痛を引き起こす信号も胎児が自ら出している。おっぱいを飲むにも一気には飲まず、途中で休んでお母さんから声をかけられるのを待っている。コミュニケーションを求める人間特有の行動だが、こういった能力は周囲の人々の愛情のこもった触れ合いから発達していく。

近代日本文学の名作を、当代一流の演出家が演出するドラマシリーズ。この回は太宰治「斜陽」。没落貴族の家庭を舞台に４人の男女それぞれの生き方を通して“滅びの美学”を描く。（１９９３年８月９日・１６日放送、全２回）◆昭和１８年、かず子（紺野美沙子）は弟・直治（鶴見辰吾）の出征を控えて、母・由利子（司葉子）と３人で別れの夕食をとっていた。嫁ぎ先を飛び出したかず子は弟の出征後、正式に離婚を言い渡され、母と伊豆の山荘に疎開する。敗戦を機に貴族の２人にとって試練が続く中、復員した直治は逃避するように東京での自由な暮らしに戻っていく。弟を案じて上京したかず子は小説家の上原（根津甚八）と運命的な出会いをする。

６月、滝谷花しょうぶ園（奈良県室生村）ではハナショウブがその美しさを競う。藤田浩さんは大和路の四季や花を撮り続けている写真家。今回は、しょうぶ園から室生路へと向かう。

佐賀県唐津市の農民作家・山下惣一さんと、山形県高島町の農民詩人・星寛治さんは出会って以来之１５年間手紙のやり取りを続けてきた。その往復書簡を軸に、日本の北と南の村の日々を見つめ、揺れる日本の農業のいまを伝える。◆減反政策や農産物の輸入自由化など猫の目のように変化する農業政策に翻弄され、後継者不足、嫁不足にも悩み続けてきた農村。さらに１９９３年は台風の被害や冷害が日本全国を見舞い、農家はこれまでにない苦境に立たされた。二人の間を行き交う書簡にも危機感が募っている。

１９９２年秋、未踏峰では世界最高峰の中国・ナムチャバルワに日中合同登山隊が挑み、成功した。大雪・強風・寒さといった厳しい自然の猛威と闘い、克服していく１２人の山男たちの全行程８０日間を同行取材し、記録する。◆合同隊は前年もナムチャバルワに挑んだが、隊員一人を雪崩で失い、強風と寒さで無念の撤退をしている。今回は新たに気象の専門家を加え、複雑な山の気象情報を事前に正確に把握、好天を狙って一気に登頂した。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「ホーム」と題して、スイスのラウターブルンネン・ユングフラウヨッホの道のりを紹介する。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆刻字は江戸時代の金文字看板に始まる。番組では横浜市南区の平井金文字店、木彫看板師６５年のキャリアをもつ平井さんを紹介する。材木選び、下地書き、木彫り、そして金箔張りなど、どの工程も確かな伝統技能で培われた新作が完成する。