１万年前、我々の祖先は土を焼き、器を作ることを知った。縄文土器に刻まれた様々な模様は、表現を手にした古代人の強烈な生命力を感じさせる。◆縄の目を紋様にした草創期の爆発的伝播現象から、中期の円熟した自己主張、生活が安定した後期・晩期の物語表現まで。縄文土器の変遷を、焼物の古今東西のシルエットをすべて網羅した人類文化発達の原形ととらえる。◆平底深鉢（縄文草創期）、尖底深鉢（縄文早期）〔長岡市立科学博物館〕、波状口縁深鉢（縄文中期）〔猪苗代法正尻遺跡〕、注口土器（縄文後期）、香炉型土器（縄文晩期）〔青森県立郷土館〕

さまざまな失敗や苦労をくり返しながらも、女性のための雑誌を創刊するという夢を実現した女性の青春物語。作：佐藤繁子。ＮＨＫ連続テレビ小説第４０作。（１９８８年４月４日～１０月１日放送）◆物語は昭和２０年８月１５日から始まる。高知県の安芸市に疎開していた“ノンちゃん”結城暢子（藤田朋子）は、村役場に勤めるかたわら、敗戦に苦しむ人々、特に虐げられた女性たちの姿にふれ、次第に女性のための本を出版したいという夢をふくらませる。

仁和寺は京都の西、御室にあり８８８年宇多天皇が創建して以来、皇族が法統を継ぐ門跡寺院である。仏教美術の粋と御室文化が生んだ美の世界を一堂に集めた、仁和寺の名宝を紹介する。◆仁和寺に古くから伝わる仏画でひときわ見事なのが、孔雀明王像である。雲の中に立つ孔雀に座した、３つの顔と６本の腕を持つ孔雀明王。これは中国南宋時代（１１２７～１２７９）の作品で、明王の冷たく澄んだ目と厳しい表情は、日本の平安時代の仏画と全く違う印象を受ける。

第二次世界大戦中に留学生として日本にいたため原爆にあい、後遺症におびえながら祖国で暮らすマレーシア人の日本語教師。彼の体験を追い、アジアにとっての「広島」と「日本」の意味を問い直す。◆マレーシアでベストセラーを記録した「わが心のニッポン」の著者、アブドウル・ラザク氏は、かつて東南アジアから日本に送り込まれていた「南方特別留学生」のひとりだった。ラザクさんを含めて９人が広島で被爆し３人が死亡、生きて母国へ帰った人も原爆症に苦しんでいる。１９８８年夏、ラザクさんは広島を訪れ“原爆の語り部”として日本人の前に立った。

八ケ岳を正面に見上げる長野県原村で野外レストランを経営する長谷川豊さんとカナダ・ケベック州出身のマリーさんのたくましく創造性溢れる生活を紹介する。◆二人は７年前に結婚、原村にやってきたときは無一物、何から何まで手作りの生活をしてきた。レストランの石造りのかまどをはじめ、鉄道のクイや電柱を材料にした小屋、有機農法の野菜、手作りハム・ソーセージ、川で手づかみにした魚。その行動力と創造性には目をみはる。野性の快男子・豊さんにほれこんだマリーさんは三児の母でもある。

１９８８年５月５日、中国・日本・ネパールの三国友好登山隊は、チョモランマの南北同日登頂と交叉縦走に成功した。同時に、日本テレビは初の頂上からの衛星中継に成功。この中継の舞台裏を伝える。◆横浜港から中国へと運ばれた機材は３０トンを超える。４０数台の大型トラックをつらねて海抜５１５４メートルの北側ベースキャンプへ運びこまれた。５月５日午前１０時５０分、テレビ隊３人が出発。午後４時、８８４８メートルの頂上に到着、約１時間にわたって３６０度パノラマの生中継を送り届けた。午後５時、下山開始。予備の酸素ボンベを持たない３人は、８２００メートルの地点までおりてこなくてはならない。無事生還が確認されたのは翌６日の午前２時４０分だった。

赤道直下ボルネオ島の北部に位置するマレーシア・サバ州。ここにすむオランウータンを絶滅の危機から救おうと奮闘している日本人獣医・北浦賢次さんの活動を追いながら、自然と人間のかかわり合いの大切さと難かしさを考える。◆北浦さんはサバ州のかつての州都・サンダカン郊外の保護林・セピログの森にあるオランウータン・リハビリテーション・センターで親を亡くしたり、不法にペットとして飼われていたオランウータンの子供を自然へ帰すための訓練を行っている。青年海外協力隊員としての２年間の任期の間に、土地の人々でオランウータンの健康管理ができるように教育することとオランウータンのための新しい病院の建設を目標に活躍する。

１９６８年３月２日、１４５人の南米移住者を乗せて横浜港を出向した「あるぜんちな丸」。成功、挫折、死など、明治百年の年、ブラジルに渡った移住者たちの２０年の歳月を追い、人生模様を描く。（前後編）◆後編。「あるぜんちな丸」に乗り合わせたのは１２組の家族、６組の夫婦、１９人の移住花嫁、４３人の単身青年など。彼らの５０日間の旅を同行ドキュメントしてから７年後、１０年後にも消息をたずね、今回４回目の取材で集大成とする。１０年前、好景気を背景に、暮らしも落ち着いた移住者の誰もが、１０年後の姿を見てほしいと語った。しかし今回は多くの人がひどいインフレにあえいでいる。