妻に逃げられた独り者のサラリーマンが、頼んだボランティアの家政婦に惚れこむ。意を決して打ち明けた彼の恋の行方を描く。原作：神吉拓郎。◆北海道から東京へ出てきて２年になる三枝博（渡哲也）は、妻に逃げられ、家事が面倒になって話に聞いていた単身赴任者のためのホームヘルパーを頼むことにした。ボランティアで来てくれた小村くみ子（長山藍子）は、美人で誠実と良いところづくめ、三枝はすっかり気に入って夕食を共にするようになる。身の上話によるとくみ子は離婚して独身だという。そんなある日、三枝の本社転勤が決まった。ついに三枝は思い切って、くみ子に一緒について来てくれるように頼む。

東洋の精神世界に深い関心を持つ画家・前田常作さんが、自らの芸術の原点という宇治市の平等院を訪ね、鳳凰堂の美の世界の中に藤原氏の心を探る。◆関白藤原頼通は１０５２年、極楽浄土の世界をこの世に造りあげようと平等院を造った。外観は翼を広げた鳳凰を模し、堂内には定朝の作った金色に輝く阿弥陀如来が、精巧緻密な透かし彫りの天蓋の下に座す。四方の壁には５２体の供養菩薩が雲に乗って舞い、楽を奏したり礼拝したり様々な姿で配されている。「どんなに富と権力を持っていても人は孤独でなんらかの不安を抱きつづけ、光明を求めている。平等院にはそんな人間の切実な祈りの世界がある」と前田さんは語る。

立身出世物語の王道「太閤記」を、一味違うストーリーと設定、大胆な新解釈で趣向を凝らして描く。第一部は桶狭間まで。◆尾張中村郷の百姓の子・藤吉郎（柴田恭兵）は、いつも侍になっての出世を夢見ていた。ある日、観音様のように美しい夢御前から「あなたの天運は女ごが開く」と告げられる。お市の方に憧れて、その兄・織田信長に仕え、寧々と夫婦になって強運を発揮する藤吉郎は、信長の覇道を支えて順調に出世していく。

情報の多様化の中にあって、今のマスコミは同種の情報を一点集中的に取り上げてはいないか、各メディアは主体性を保ちながら読者や視聴者のニーズにどう応えていくかなど、マスコミ倫理懇談会、公開番組「ビューポイント」（アメリカＡＢＣ放送）などを紹介しながら討論する。出席は原寿雄（共同通信社編集主幹）、川上宏（成城大学教授）、藤久ミネ（放送評論家）、山田太一（放送作家）の各氏ほか。司会は評論家の草柳大蔵氏。放送記念日特集。

古代から神の器としてあがめられてきた鏡。鏡が写す姿は人の真影とされ、玉や剣と並ぶ神器として信仰を支えてきた。◆鋳型の造形、鋳造、研磨の３つの工程をこなし、粘土の原形に１００種類のへらを使って紋様を押し出す。鳥と花という縁起の良い紋様を持つ『双鳳桐花鏡』の工程を追い、美術工芸品としても高く評価される日本唯一の鏡師の、おのれの心を磨く技と根気と研ぎの世界をみる。

明るくたくましく生きている文楽人形師の娘おさとが老舗の鯛味噌屋「幾村」に嫁ぎ、のれんの再興にかける。（１９８８年４月１日終了、全１２７回）◆日中戦争が始まった昭和１２年の大阪。おさと（沖直美）は新町の目抜き通りにある鯛味噌屋「幾村」で通いの使用人として働き、５年前から寝込んでいる父親・亀造（芦屋雁之助）の面倒を見ていた。幾村は江戸創業の老舗で、家つきのご寮人・タツ枝（丹阿弥谷津子）と婿養子の清兵衛（長門裕之）が切り盛りしているが、あとつぎ息子は妻を無視して芸者狂いする放蕩者だった。

中国と日本。それぞれの社会体制や言葉、習慣などの違いを乗り越え、農業を志す岩手県の若夫婦の姿を追いながら、農家の嫁不足問題を浮き彫りにする。◆岩手の米どころ、江刺市の農業後継者・及川光山さんは３７歳。なかなかの好青年ながら独身。「人を嫌うのではない、農業を嫌うのだ」と語る父・誠一さんは日本での嫁さがしに見切りをつけ、岩手県と交流のある中国・山西省太原市の知人に声をかけた。話はトントン拍子に進み、小学校の先生をしている杜小英さんがお嫁に来ることになった。

男が唄うものとされて来た長唄を、男が弾き女が唄うという形にした杵屋佐登代の歩んだ道をたどる。◆長唄は上方の地唄として生まれ、江戸で発達した三味線音楽である。長唄の粋なところをさらに魅力あるものにして唄うことを探り続け、出すぎず、女ならではのものを表現したいとバチを握り続ける毎日である。