若手舞踊家による二演目。「青海波」を踊る花柳錦之輔は家元の人間国宝・花柳寿楽の孫、「松廼羽衣」を踊る尾上紫、青楓は家元・尾上菊之丞家の姉弟で、いずれも日本舞踊界のホープとされている。日本人の自然観と深く結ぶ、”海”と”松”にまつわる演目であり、羽衣伝説の舞台である静岡県三保海岸の御穂神社を訪ね、いわれを探る。また、「渡辺保の部屋」では西洋舞踊にはない、日本舞踊の、”踊り”と”音楽の詞章”（浄瑠璃など）、”振付”の三者一体の関係について考える。

井上流京舞二題を鑑賞する。上方唄の「意見曽我」と義大夫の「芦刈」で、演劇評論家の権藤芳一の解説。江戸期には曽我兄弟の仇討ちものが人気をあつめ、正月興行では競って曽我ものが懸かっていた。「意見曽我」は遊女”化粧坂の少将”が仇討ちを控えた五郎の短気を諫めるという珍しい内容の出し物。また伝統芸の能が盛んな京都では、能に素材を取った外題が多く、「芦刈」もその一つ。いずれもゆったりとした振付で井上流京舞の特徴がよく現れている。京都・祇園歌舞練場で収録。

１９９１年２月に放送された「密林の巨人・ゴリラ」の続編。アフリカ・コンゴの密林で、絶滅の危機にあるローランドゴリラの生態調査を続ける京都大学霊長類研究所の調査隊に同行、取材する。◆アフリカ大陸・コンゴ共和国の首都ブラザビルから北へ８５０キロ、ウエッソからサンガ川を１００キロさかのぼる。“ンドキの森”の入り口、ボマサ村。木材資源に頼るアフリカ、熱帯林はこの１０年で１７パーセントも減ってしまったという。コンゴも南部の森は壊滅状態で、北部のンドキの森だけが頼みの綱だが、広大な森の中にゴリラはわずか４万頭しかいない。

大地と共に生きてきたオーストラリア先住民族・アボリジニ。彼らの現状を取材し、人間らしく生きることへの先住民からのメッセージを伝える。◆アボリジニは、白人が入ってくるはるか以前からオーストラリア大陸に住む狩猟採集民族である。いま、彼らの社会を揺るがす開発の波が押し寄せている。多国籍企業による鉱物資源の採掘で土地を追われ、失業を余儀なくされている一方で、採掘権料をもとに「ふるさと回帰」を提唱する運動を展開する彼ら。伝統の儀礼や文化を守っていくため街から森へ戻り、自然と共存する狩猟採集生活を回復する試みをすすめている。

名人と言われた歌舞伎役者市川小団次の生い立ちを語る一席。大部屋から桧舞台に上った中村米十郎（小団次の前名）は評判が上々だったが、身体の具合を悪くして舞台に穴を開けてしまう。師匠から一座を追い出された米十郎は、旅回りを重ねて名を挙げ、人気役者として江戸の舞台に立つ。米十郎は、世話になり育ててくれた師匠に再会して礼を言い、改めて師弟の契りを結ぶ。

アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９２年４月６日開始、全１１回）◆ミャンマーと国境を接する町・タイのラノーン。１９６２年、ミャンマーが社会主義路線を歩みタイ・ミャンマー国境が封鎖されても、ラノーンは両国を結ぶ唯一の接点としてにぎわっている。ラノーンとミャンマーを結ぶ渡し船の乗客を軸に、国家体制の違いをこえて結び付く人々の心情を描く。

原発事故による放射能汚染にむしばまれたベラルーシ共和国の子供たちが保養のため来日。半年後、逆にベラルーシを訪れた受け入れ家族の一人は厳しい現実に直面する。◆１９８６年のチェルノブイリ原子力発電所事故により、ベラルーシは国土の３分の１を汚染された。放射能は抵抗力の弱い子供たちを真先にむしばんでいった。民間の救援活動も始まり、１９９２年夏には３５人の子供たちが来日。福島原発近くに住む橋本さんは里親として５人を受け入れた。元気に夏を過ごして帰国した子供たちの故郷を、半年後、橋本さんが訪れる。

歌舞伎でおなじみでそして長唄の名曲中の名曲、『勧進帳』を鑑賞する。◆この曲に人気があるのは観客が弁慶たちの命運に無常を感じ、そのことに親しみを感ずるからであろうか。芝居だけでも千回は唄ったという芳村五郎治は、弁慶の気持ちで唄い通すと語る。易しい手だけで素晴らしい曲と言う杵屋五三郎も、それだけに気の抜けない曲だと話す。◆「勧進帳」唄二世芳村五郎治（重要無形文化財保持者）、三味線三世杵屋五三郎（重要無形文化財保持者）、囃子望月太左衛門。◆副音声は英語