かつて白山山ろくには、３５０戸ほどの「出作小屋」があった。時代とともに次第にその姿も消え、今は老夫婦２人だけが山に入り田畑を守っている。水を司る神として信仰を集めてきた白山への登山口・白峰村の自宅から、毎年雪溶けとともに山へ戻る。冬の間、小屋の中に入れて雪から守った地蔵を外に出し、心を込めて作った繭玉を供え無事に田植えができるように祈る。◆白峰村〔石川県〕

岐阜県吉城郡上宝村の暮らしは湯煙と共にある。奥飛騨温泉郷の１つ、平湯温泉。町中に篠原無然記念館がある。兵庫県出身の無然（１８８８～１９２４）は、平湯の分教場の教師として青春を過ごし、のち製糸工場の女工救済に全力を挙げた。そして各地で様々な社会奉仕を続ける一方、上宝村に温泉開発を進めるなど村のために生涯を尽くした。◆１９２４（大正１３）年、３６歳のとき安房峠で遭難。彼の遺徳は今でも村人に語り継がれている。◆上宝村〔岐阜県〕

養母の、生さぬ仲の息子への愛と嫁への嫉妬からもつれた糸が親殺しにつながり、夫婦の強い愛情が心中という哀しい形で貫かれるまでを描いた近松もののドラマ化。近松門左衛門「心中宵庚申」より。◆大阪新靱の八百屋伊右衛門方では、養子の半兵衛（滝田栄）と嫁のお千代（太地喜和子）は人もうらやむ仲の良さ。しかし姑のおつや（乙羽信子）には半兵衛への秘かな想いがあり、何かにつけてお千代が気に入らない。ある宵庚申の夜、法事にでかけた半兵衛の留守におつやはお千代を実家に帰してしまう。法事から帰った半兵衛は、お千代に落ち度がないと知るとお千代を大阪に連れ帰った。半兵衛はお千代を町家にかくまってひっそりと通い、時期を見て共に帰ろうとしていた。しかし次の宵庚申の夜、迫ってきたおつやを半兵衛は過って殺してしまう。

時代劇「必殺仕事人４」の撮影現場を背景に、京都映画撮影所の制作進行を長年務めてきた鈴木政喜さんを、月亭八方が密着取材する。◆鈴木さんは通称マーちゃん。時代劇を制作する撮影所で制作進行を４０年も務めてきた。鈴木さんは、そもそも大部屋俳優として映画の世界に入ってきた。芸名を淀神勝利といい、今でも端役で出演することがある。活動屋４０年の鈴木さんのユニークな生き方を哀歓を交えて描く、人物探訪のドキュメント。

越中五箇山。降りしきる雪を今もかやぶきの屋根が支えている。岐阜との県境を越え、深い山間に囲まれた所が富山県東砺波郡の集落。庄川の流れに沿って３つの村があり、その一帯を総称して五箇山と呼ぶ。かやぶき屋根が天に向かって祈るように、合掌造の家がたたずむ。素朴な祈りから生まれた古代の建築様式。合掌造の里の冬は、来る日も来る日も雪との闘いである。◆出稼ぎで男手の少ない村での、女たちの雪との格闘を中心に描く。◆【史跡】越中五箇山・相倉集落〔富山県〕

真鍋島は岡山県笠岡市の沖合、瀬戸内海の中央にある。周囲およそ７キロメートル、人口７６０人の小島である。明治のころ、島の小さな港は笠岡諸島の漁業の根拠地だった。いつのころからか漁業は不振となり、島に若者はいなくなった。一度も霜が降ったことのない温暖さを利用して３０年ほど前から花栽培を始め、島を花が埋め尽くす。◆真鍋島〔岡山県〕

信州人物風土記は、明治～昭和期に各界で活躍した長野県ゆかりの人物を取り上げ、その功績と生涯を解説するシリーズ。◆今回は、日本最初の山岳案内人組合を結成し、北アルプス登山ルート開発、大沢小屋と針ノ木小屋を建てるなど、わが国の近代登山に多大の影響を与えた百瀬慎太郎を紹介する。◆百瀬慎太郎（１８９２～１９４９）は、長野県北安曇郡八日町の旅館「対山館」経営者の長男として生まれた。旧制大町中学在籍時に白馬岳に二度登ったことを契機に、登山に強く惹かれるようになり、日本山岳会に入会。家業の旅館を経営しながら１９１７（大正６）年に日本最初の山岳案内人組合である「大町登山案内人組合」を設立した。その後、１９２６（大正１５）年に大沢小屋、１９３０年（昭和５）に針ノ木小屋を建設し、近代登山の先駆者として活躍した。また、若山牧水門下の歌人でもあり多くの歌を残した。「人を想えば山恋し　山を想えば人恋し」と北アルプスへの思いを詠んだ歌は、人々に親しまれている。大町の風景や、山小屋などゆかりの地を訪ねて、百瀬慎太郎の業績と人となりを紹介する。

中学校の職員室を舞台にした、先生たちのディスカッションドラマ。ドラマの形式をとりつつ、今日的な教育問題へ切り込む。作：山田太一。◆九州のある公立中学校。放課後に、不良グループが大挙して職員室を襲うかもしれないという事態が発生する。集められた教師たちが、生徒たちへの対応をめぐって激論を交わすうち、各人の意見・立場、個人的な事情までもが明らかになっていく。