静岡県水窪町は長野へ抜ける信州街道が通る。ここに伝わる西浦田楽は、中世の頃の芸能で現在の能の原形をとどめているといわれる。徹夜で観音さまに奉納される舞は、地区の人々が世襲で役割を分担して舞う。悪霊を払う「地がため」から始まる舞は、「地能」「はね能」を通して四十数段に及ぶ。舞は、神が邪気、悪霊を払い、豊作を約束したところで朝を迎えて終わる。◆西浦田楽〔静岡県〕

室生は古くから大和と伊賀・伊勢を結ぶ交通路の要所だが、景観は静寂そのもの。その中心地にある室生寺を歌人の道浦母都子さんが訪れ、人々の心をとらえて止まない室生の魅力を紹介する。

第十四段まで。能の『石橋』と大きく違って獅子そのものがクローズアップされている。◆後半の特色は能とは大きく違う構造になっている。舞楽子の舞は、文殊菩薩ではなく将軍の面前で舞われるという設定である。江戸中期まで女であった獅子が男になったことも大きな点である。◆「鏡獅子」中村勘九郎、遠山幸子、羽鳥友加里。◆副音声は英語

建築史家の三宅理一が山梨県忍野村に松田百合子を訪ねる。◆松田さんの陶房で磁器のズッキーニの形成が進む。身のまわりの野草、花、富士山までも作品にし、九谷焼の青、黄、緑、紫、赤、黒と金の七色で明るく彩る。子供のころは、シンデレラより魔法使いのおばあさんに惹かれた。◆茶室には陶製の齧りかけの西瓜の一輪挿しがあり、食卓には紙ナプキンまで金襴手のやきものが並ぶ。毒気のある、音でいえば濁音を表現したい、そして驚きや笑顔が見られればそれが求めるものという。

年始にちなみ、「新春を寿ぐ万葉の世界」を３回にわたって送る。歌の舞台と景観を、犬養孝さん独特の節回しと語りで紹介。１回目の歌は「新しき　年のはじめの初春の　今日降る雪の　いや重け吉事」（大伴家持）など。

釉薬をかけず、土をじっくりと焼きしめる備前焼。人間国宝の父に師事し、自分も国宝となった藤原雄（当時６４歳）の工房を、ピアニスト岡崎ゆみが訪ねる。◆まず土の良し悪し、そして窯の中で火や灰が微妙な絵を描く窯変が、作品を左右する。やきものも窯も自分もそれぞれが壊れるかもしれない、ぎりぎりのところで作品ができる。◆太古から未来まで変わらない美しさを表現したい、それはあっと驚かすことでなく、花を生けたい、酒を飲みたいという自然の感情だ、という。

高知県内の観光スポットや、歴史・文化・風習、また新規事業などを紹介するシリーズ。（１９９６年４月７日～９月２９日放送、全２６回）◆最終回。四万十川流域の人々の生活を中心に構成する。１５年ほど前までは、専業の川漁師が数多くいたが、最近では数える程になってしまった。何が四万十川を変えてしまったのか。

全国に今も残る大黒柱のある家を取材し、その家族が守り続けている家訓や生活の知恵、大黒柱に対する深い思い入れなどを紹介。◆人口４００人ほどの小さな漁村がある。徳島県南部、太平洋に面した由岐町の阿部という海女の里である。村人の半数は素潜りをなりわいとしてきた漁師たちである。ここに暮らす漁師夫妻の話。家を建てるとき、選んだ大黒柱は、巾８寸（２４ｃｍ）の欅、今でも人間を扱うように大切にしている。しけで海に出られなかったときは、夫は独りで日本酒で柱を磨き続ける。ピカピカの大黒柱を自慢にしている。