１９６２年５月２１日羽田空港にソ連の第１号宇宙飛行士ガガーリン少佐とワレンチーナ夫人一行がハバロフスクから特別機で来日した。空港でステートメントを発表した後、歓迎の人波に愛想の良い笑顔を送りながらパレードのオープンカーに乗り込んだ。武骨さもなく、軍人よりはむしろ外交官といった感じのガガーリン少佐は走り出す車の上から若い人達と握手を交わす。宿舎へ向かう都内パレードの途中、警備のスキを狙って右翼の嫌がらせがあったが、事無くすんだ。この日ガガーリン夫妻は直ちに池田勇人総理を首相官邸に訪問、平和と友好の使者として９日間の日本旅行が始まった。

自衛隊自慢の国産ミサイルは対戦車誘導弾。近く各師団に配属されることになっている。アメリカの中古ばかりといわれた戦車も国産時代に入り、この程第１号車の引渡式が行なわれた。１９６２年１０月２８日、雨の神宮外苑広場で１２周年を迎えた自衛隊の記念式典が行なわれた。車両部隊の行進では国産品が目立ち装甲車、ミサイル、射撃用レーダーなどが人目を集めた。１２歳の自衛隊の意気を示そうと隊員達はびしょぬれになってのパレードだった。

マーキュリー人間衛星に乗り込むグレン海兵隊中佐は、米国の誇る宇宙飛行士の７人の侍の最年長者。計器に埋まった狭いカプセル内での６０回に及ぶテストも完了。いま最後の準備、打ち上げ延期は米国を失望させたが、たとえ死ぬことになろうとも宇宙探検を続けて欲しいと宇宙に挑む日を待っている。日本一の美女、山本富士子さんは、作曲家古屋丈晴さんと婚約を発表、７年越しの恋が実って幸せがいっぱい、指折り数えて新婚旅行の日を待っている。大相撲初場所に１３勝２敗で堂々たる優勝を飾った２１歳の横綱大鵬は、１５年ぶり史上５人目の４場所連続優勝の記録を作り、これからも新記録を生むものと期待されている。

八丈島の南東海上で足踏みをつづけ、予想より２日遅れて本土にたどり着いた台風１２号は、さんざん気をもませた挙句、日照り続きの関東地方に恵みの雨を降らせて駆けぬけて行った。毎年大きな被害を残す台風の実態と取り組む東京中野の気象研究所中野分室。ここの台風発生装置は高橋博士と助手の工藤さんが考案したものである。ドライアイスを用いて本物と同じ状態で人工台風を発生、世界で初めて成功した。電気ヒーターで空気を暖めて対流を起こし、地球の自転に相当する回転板の作用で台風が渦巻くという仕掛。やり直しやり直しでなかなか根気がいる実験である。またマッチを仕掛けて台風の直上で爆発させて台風をつぶす実験では、台風はまたたくまに消滅するが、この爆発力はメガトン級の水爆１千万個分に匹敵するとか。これでは地球の方が吹っ飛んでしまいそう。

東京都台東区立竹町小学校、ＰＴＡのお母さん達が月に一回総出で繰り広げる廃品回収運動。くずやお払い物はないかとリヤカーを仕立てて町内を回り、ご用聞きにまわる。公園はトラック２台分の廃品でいっぱいになった。都内で一番設備のよい学校にしようと初めたこの運動、今年で７年目を迎えお母さん達は大張り切りだ。本日の売り上げ高は２万３千円と大収穫だった。ＰＴＡの委員会はこのお金を積み立てて、鼓笛隊をつくることに決めた。こうして、廃品回収は実を結び、新設された鼓笛隊は運動会目指して猛練習に励む。本番の日には日頃の成果の見せどころと並みいるお母さん達を前に大熱演。楽しい１日を過ごした。

アメリカは２人の民間人を含む９人の新しい宇宙飛行士を発表した。月に人間を送り込むアポロ計画に先立ち、アメリカは２人乗りのジェミニ宇宙船の計画に大わらわである。ドーナツ型宇宙ステーションとのランデブーも予定されている。また画期的な設計のＸ−２０ダイナソアーロケットと６人のパイロットも公開された。３年後にケープカナベラルから打ち上げられる予定。第１段ロケットには強力なタイタン３号ロケットを使用し、３段目の最終ロケットを切り離した後、ダイナソアーは時速２万７２００キロのスピードで軌道を廻り、大気圏突入後はパイロットの操縦で好きな場所に着陸できるという。

若者の全てを見聞きしようと来日したアメリカのケネディ司法長官夫妻は油まみれの工員と気軽に握手。日本製品の輸出問題を語り合うなどざっくばらんなところを見せた。又朝６時からスケート場で若い人と手をつないで滑り、１日１８時間の強行軍も３６歳のタフな長官には苦にならなかったよう。関西では枚方市の公団住宅に訪れ、団地の主婦と親しく語った。このように長官の人柄は誰にでも親しまれ至る所で歓迎の握手攻めだが、歓迎だけでなく京都では公開質問状を持つ組合員が押し寄せ、日本大学では名誉法学博士の学位が贈られ、早稲田大学の討論会（１９６２年２月６日）では全学連に対し、長官は少しも騒がずどこ吹く風。役者が１枚上。また総評、全労の幹部と日米間の諸問題について話し合い、帰国前夜は毎日新聞社に立ち寄り記者１人１人に挨拶。各層の声を聞きケネディ旋風を起こし日本を去った。

瀬戸内海を島づたいに本土と四国を結ぶ東洋一の海上送電線中四幹線が、このほど完成した。電源開発が４０億円の巨費をかけて建設した全長１２５キロの超高圧電線は、今後四国の水力開発が進むにつれて、その効用を大いにすることだろう。関東平野を流れる利根川の河口に日本一を誇る長さ１４５０メートルの銚子大橋が、１２月１０日開通した。長い間の夢が叶って千葉県銚子と茨城県波崎は一日中開通祝賀で賑わった。（週間話題）