東京都台東区立竹町小学校、ＰＴＡのお母さん達が月に一回総出で繰り広げる廃品回収運動。くずやお払い物はないかとリヤカーを仕立てて町内を回り、ご用聞きにまわる。公園はトラック２台分の廃品でいっぱいになった。都内で一番設備のよい学校にしようと初めたこの運動、今年で７年目を迎えお母さん達は大張り切りだ。本日の売り上げ高は２万３千円と大収穫だった。ＰＴＡの委員会はこのお金を積み立てて、鼓笛隊をつくることに決めた。こうして、廃品回収は実を結び、新設された鼓笛隊は運動会目指して猛練習に励む。本番の日には日頃の成果の見せどころと並みいるお母さん達を前に大熱演。楽しい１日を過ごした。

毒ガス工場として戦時中はベールに閉ざされていた瀬戸内海の大久野島。戦後は廃虚と化し、人も寄りつかなかった。毒ガスに冒された元工員達、戦争の隠れた犠牲者として２百人もが今も不治の病に伏している。このほどこの島と、対岸の広島県忠海との間に送電線架線工事が始められた。両岸からくり出されたメッセンジャー・ワイヤーが船上で結ばれ、３３５７メートルの海峡いっぱいにケーブルがはり渡された。四国と中国の海上、３３キロを結ぶ大規模な２２万５千ボルトの送電線工事の中でもこの島と忠海に立つ鉄塔は、世界最高の２２６メートルを誇る。年内の送電開始を目指して急がれる工事の一方、、島を国民宿舎の村とする計画も進み、すでに一部では若い人達の元気な声が聞こえるようになった。こうしてかつて人も寄りつかなかった毒ガスの島は、時代の流れとともに大きく生まれ変わろうとしている。

地獄の入口三途ノ川を渡ってお坊さんの行列が青森県下北郡の恐山に向かう。近郷近在のおばあさん達もバスにゆられて年に一度の恐山の大祭にやってきた。この山は西の比叡山、高野山とならんで日本三大霊場の一つ。千年の昔からこの地方の人は死者の霊は恐山に帰ると信じてきた。先祖を供養する法要のあと、本殿の軒下に陣取るイタコに故人の霊を呼び戻してもらう。あやしげな呪文が唱えられるうちに、故人の声がイタコにのりうつったような錯覚がして、なつかしさで涙がこぼれる。この仏おろしの料金は一回五十円、ついでに病気の治療も頼み、これが終ると裏山の地獄めぐり、素朴な信仰に生きるおばあさん達は賽の河原に石を積んで先祖の冥福を祈った。

アルジェリアの独立と民族自決に対しウィかノンか、フランスの良識をかけた国民投票が１９６２年４月８日行なわれた。ドゴール政策を９０パーセント以上が支持、秘密軍事組織ＯＡＳに手厳しい審判を下した。テロの続くアルジェではアジトから武器弾薬が押収されていくかたわら、犠牲者もすでに３千人をこえている。追い込まれたＯＡＳの最後のあがきは今日も暗い影を投げかけている。

一足早い南国の春を楽しもうと政界、財界の名士多数が特別機を仕立てて、東洋のナポリ鹿児島を訪れた。

１９６２年９月３日、アメリカから極秘のうちに横浜港に陸揚げされたナイキミサイルの輸送阻止を狙う労組員が、米軍埠頭入口線路上で鉄道公安官と激しくもみあった。コンテナにつまれて霞ヶ浦の自衛隊に運び込まれたナイキ・アジャックスは、音速の２．５倍だが、誘導弾としては旧式といわれている。すでに千葉県習志野をはじめ、４ヶ所で発射基地の建設が急ピッチで続けられ、１１月には１個大隊が配置されて、日本も誘導弾を持つことになった。（週間話題）

国鉄史上２番目と言われる三河島衝突事故によって十河信二国鉄総裁の進退は国民の大きな関心の的となった。十河総裁は進退問題を政府に一任。しかし遺族会は最後の責任を果たしてからでなければ辞めるべきでないと要望した。政府与野党内では十河総裁の留任について河野一郎農相らが難色を示したが、池田勇人首相は１９６２年６月２３日適当な後任者がいないことを理由に留任を決定した。昭和２６年（１９５１）の桜木町事故では当時の加賀山之雄総裁が責任をとって辞職。昭和２９年（１９５４）の青函連絡船洞爺丸、同３０年（１９５５）宇高連絡船紫雲丸の度重なる沈没には長崎惣之助総裁が辞職。しかし十河総裁になってから起きた３１年の参宮線列車衝突事故とこの度の三河島の惨事にもかかわらず留任という異例の処置。こうして十河さんは決意を新たに今後の事故防止に全力を傾けることになった。

福井県の敦賀・今圧間に日本で一番長い北陸トンネルが完成。旧本線は明治２９年以来６５年の歴史を閉じることになった。最後の列車が入って来た新保駅では駅長さんが機関士と握手を交わして最後のおつとめを果たした。かずかずの苦労もただ思い出の中に消えて行く。苦労をわけあってきた同僚と別れの杯をくみかわして新しい職場にさっていった。１９６２年６月１０日新線開通の日を迎えた敦賀駅では北栄造福井県知事がテープを切って午前９時１３分祝賀列車がスタート。十河信二総裁をはじめ１千人の招待客を乗せた列車はやがて全長約１４キロの日本一長いトンネルに入る。４年４ヶ月の歳月と８０億円の費用をかけて完成した北陸トンネルの開通と、敦賀・福井間の電化によって今まで悩みの種だった日本海側地域の輸送は一段とスピードアップされることになった。