第四高等学校物理化学教室は、西洋技術の導入を急務とする明治政府の意気込みを背景に、明治２３年、金沢に竣工した。教室は階段式という斬新な構造だった。また、同じく移築保存されている武術道場「無声堂」は、明治にはじまる洋風道場建築の貴重なもので、道場内には剣道場と柔道場が併置され、弓道場もある。６３年間の歳月に、１万２千人をこえる四高健児を世に送り出した。旧制学校生の青春を、二つの建物から回想する。◆第四高等学校物理化学教室・無声堂

総合雑誌の草分け『中央公論』の創刊から１００年。総合雑誌を通して日本の近代をふりかえるシリーズ。（１９８５年１１月２５日開始、全４回）◆最終回は「講和条約前後」。終戦を境に社会は一変、言論ジャーナリズムもにわかに活発になった。６６誌が創刊、９２誌が復刊され、出版社も３００社が翌年には１９５０社に達した。それもつかのま、ＧＨＱのプレスコードによる抑制が始まり、事態は再び変化する。◆サンフランシスコ条約前後の世相を背景に、『世界』の発刊や、大宅壮一の新しい言論、梅棹忠夫の文明論などの潮流に言及し、ジャーナリズムとアカデミズムとの相関を考える。

現代日本をめぐる様々な問題、国民的課題を取り上げ、分析や検討を加えながら、進むべき方向を探る討論番組。この回は報道の自由とプライバシー、人権侵害の問題がテーマ。司会は木村太郎記者。◆「センセーショナリズムでなければジャーナリズムではない」とまで言われる現代。警察より先行する「ロス疑惑・三浦報道」、殺人を傍観していた「豊田商事・永野会長刺殺事件」など、マスメディアに対する批判が相次いだ。これらの動きを踏まえて、ジャーナリズムの第一線で活躍する人たちが討論し、ジャーナリズムの本質とは何かを浮き彫りにする。

「食」をめぐる営みは、最も根源的な「文化」であり、それぞれの民族がそれぞれの風土の中で何千年にもわたって練り上げた知恵の結晶である。このシリーズは、人間が有史以来“何をどのように食べてきたか”を世界各地の食生活と風土の中に探り、食べものがいかに民族の精神を形づくり、文明の質を規定してきたかを明らかにし、飽食の日本人に「食」のあり方を問いかける。◆第４集「ジャガイモ」。広く世界中で好まれているジャガイモのふるさと南米・ペルーのアンデス山中のインディオはジャガイモを栽培し、主食にした生活を送っている。斜面の多い大地と共に生きる姿を通して、食べ物が本来、いかに風土と密着したものであるかを紹介する。

青函トンネル貫通式の模様を、北海道側・吉岡坑口と本州側・竜飛坑口の式典会場から生中継。加えて、英仏を結ぶドーバー海峡のトンネル工事中止の例や、長距離トンネルを利用しているフランスのベルシー～ニース間の鉄道を紹介。新幹線の通る見込みのない青函トンネルの前途を占う。◆午前１０時５分、山下徳夫運輸大臣の発破スイッチで最後の壁が爆破され、津軽海峡の真下を通る世界最長の海海底トンネルが開通する。１９６４年着工、延べ１２００万人を動員した大工事だった。

１９４５年（昭２０）、鹿屋航空基地から多くの若者たちが特攻機で飛び立ち南の海に消えた。その中に出征前、東京・日比谷公会堂で日本交響楽団の演奏会を聴いていた予備学生がいた。彼にとっては出征前に聴いた演奏会が“最後の演奏会”となった。当時「これが自分にとって最後の演奏会になる」という思いで日比谷公会堂に通った学生は少なくない。そんな演奏会を支えた楽員たちにも、召集の手は容赦なく伸びていった。

ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日～８月９日放送、全５回）◆第三回。「警視総監賞」「父の風船」「キャデラック煎餅」と父の思い出をつづった３作品を朗読する。巌しくもあり、優しくもある父親を思う作者の心に感じた夏子は、せめて故郷に帰っている間だけでも父に優しくしようと思うのだった。

西独ライン川のほとり、ルール炭田地域に働く日本人炭鉱労働者の生活を描きながら、日本の石炭産業の盛衰とそれに翻弄された人々の歴史をつづる。◆２５年前、西ドイツ最大の重工業地帯であるルール地方に日本からおよそ４５０人の炭鉱労働者が派遣された。技術研修という名目だったが事実上西独の人手不足に応じたものだった。派遣員は３年の契約だったが、西独女性と結婚してそのままドイツに留まった人もいる。ＲＡＧローベルク鉱で働く７人の暮らしを追いつつ、人々の上に流れた時間をたどる。