平和と友好の使者としてわが国を訪れたソビエトの宇宙飛行士第１号ガガーリン少佐は東京をはじめ各地で大歓迎を受けた。その頃、アメリカではスコット・カーペンター少佐がアメリカ第２号の宇宙飛行士として人間衛星船オーロラ７号に乗り込んだ。１９６２年５月２４日午前７時４５分オーロラ７号はケープカナベラル基地を離れ、４時間５６分で地球を３周した。大気圏に再突入の際、自動制御装置が故障したためか予定着水地点が３２０キロもそれ、マーキュリー本部はいろめきたった。回収部隊必死の捜索により波間に浮かぶカーペンター少佐を救出、カプセル回収に成功した。オーロラ７号の成功によりカーペンター少佐は米ソの宇宙戦争を互角に導いた。

大規模な建設作業が急ピッチに進められている都会。高度な技術が必要となってきた土木工事に技術者の不足がめだっている。若手が少なく助手不足のままに地味な研究を続けている電気通信研究所は平均年齢３６歳といわれていて、こうした技術者の不足を補うため今年から５年制の工業専門学校１２校がスタート、工業技術のにない手としてその将来が大いに期待されている。

天理市の事初めは８８年の歴史をもつお節会の人出で賑わう。およそ９万人の信者が貸切りバスや臨時列車でくりこみ大食堂で御雑煮の食べ放題。信者の胃袋に収まる餅はざっと３０トンで大型トラック６台分に相当する。一方こちらはきれい所を乗せたホエかごが威勢よくねりまわる大阪今宮えびすのにぎわい。商売繁栄の福笹、値上げムードでワンセット千円と昨年の２倍の高値だが、それでも飛ぶように売れている。金詰まりや不景気風の吹くさなかだけに神頼みの人で境内はぎっしり満員、３日間で１７０万の人出を記録した、おさい銭だけでも３８０万円あれこれ集めると総収入２千万円といわれ、えべっさんだけがニコニコ顔の十日えびすの売上。

一足早い南国の春を楽しもうと政界、財界の名士多数が特別機を仕立てて、東洋のナポリ鹿児島を訪れた。

埼玉県秩父の山奥にある鉱山で働きながら晴の卒業を迎えるカンテラ学級の６人の青年達。へき地の為に高校進学を断念したこの人々が見出したのは通信教育の道。鉱山の小学校を借りて毎晩お互いに励ましあって歩み続けた勉学の４年間だった。蛍雪の功なって、卒業式に向かう青年達、半日かかって始めて見る母校浦和高校へ。卒業式で大喜びの卒業免状を手にした。一方両眼失明の早稲田大学の大塚君は卒業論文が抜群の成績、リーディングサービスから送られて来るテープを頼りに点字でメモ。そのメモをもとにして原稿を書いてもらい３８０枚の大論文を仕上げた。この不屈の努力が実って卒業式には第２部２０７人の卒業生総代の栄光をかち取った。満場の学生から惜しみない拍手、４年間の厳しい風雪を堪え忍んで迎えた晴れの卒業式。

秋の観光シーズンを迎えた古都奈良。東大寺では国宝念仏堂の改修工事が完成に近づいた。しかし観光コースからはずれた般若寺や、海竜王寺では昨年の台風で被害を受けたまま、文化財保護委から９００万円の補修費がありながら、あとの１００万円を工面できずいまだ雨ざらし。このほど誕生した「奈良を守る会」は奈良を愛する人なら誰でも入会でき、同志を集めている。春日大社では秋の名物鹿の角切りが始まった。２８０年前から続いているこの角切りが終ると奈良の秋は深まっていく。

山形県の羽黒山で新しい年を迎える歳夜祭が行われた。この祭は羽黒山伏最高の行法、本殿では験競の神事、外では大松明の神事がと同時に行われて神事は最高潮、害虫の災を焼きはらって豊作を祈る１３００年来の火祭。千葉県の成田山は押しかけた人で御札所は馬券売り場のような賑わい。不景気になれば逆に客足は増えて戦後最高の人出、所得倍増男の池田勇人首相は夫人と明治神宮へ初詣。京都伏見のお稲荷さんは元日が雨で出足を止められ２日目からようやく新春の賑わいを見せた。大阪府寝屋川の不動さんには２０００台の車が交通安全の御祓いをうけた。神戸市の繁華街にある生田神社は境内を駐車場にして交通安全をお祈りして駐車料金ならぬ祈願料を頂く新商売を始めた。新春早々駐車場は満員、ガメツク稼いでいる。

我が国航空技術陣が翼を失ってから１７年目に日本も国産機の時代を迎え、５人の設計者を中心にＹＳ−１１の制作が始まったのは今から５年前。世界的に有名な零戦を造った堀越二郎氏、隼戦闘機の太田稔氏、航研機の設計者木村秀政氏、かって軍用機１本やりだった我国航空技術は旅客機をもって再び世に問うことになった。航空技術研究所では、主翼を揺さぶって気流や突風に耐えるテストが連続的に３万時間も続けられている。こうした地上テストに並行して１９６２年８月３０日、小牧飛行場ではＹＳ−１１の試験飛行が行なわれた。５年間心血を注いだ生みの親、土井武夫・太田・堀越・木村の４氏が見まもる内に、全長２６．３メートル、幅３２メートルのプロップジェット旅客機が大空に舞い上がった。これまでの費用は５０億円。６０人乗りとしては滑走路は短く、国内線向けにすぐれた性能を示した。こうしてわが航空技術陣は１７年のブランクの末、再び大空の自信をとりもどした。