警視庁警察学校１５００人の１年生が新学期を迎え落成した校舎にはバーや交番のセットができ、第１線勤務の諸要領を覚えさせる応用授業が行われている。バーテンも客も生徒、監督は教官ドノ、トチったりダメがでたり微笑ましい雰囲気。教室の見物席から爆笑、交番勤務も難しそう。科学警察研究所、６５枚が発見されたニセ千円札に取り組む文書班は拡大鏡によってニセ札の印刷ムラなどを調べ、科学班は紙質調査をしている。ピストルの弾丸を調べる物理・機械班は比較顕微鏡で、現場に残された弾痕と一致するピストルを追求している。モンタージュ写真の作成は手数を省くために幻灯式を採用して未知の犯人の素顔を描き出している。身許不明、手がかり無しの白骨死体と取り組む法医学班、頭骸骨に肉付けを粘土で行い被害者の顔を復元する。科学の力を借りて事件は解決されていく。

八丈島の南東海上で足踏みをつづけ、予想より２日遅れて本土にたどり着いた台風１２号は、さんざん気をもませた挙句、日照り続きの関東地方に恵みの雨を降らせて駆けぬけて行った。毎年大きな被害を残す台風の実態と取り組む東京中野の気象研究所中野分室。ここの台風発生装置は高橋博士と助手の工藤さんが考案したものである。ドライアイスを用いて本物と同じ状態で人工台風を発生、世界で初めて成功した。電気ヒーターで空気を暖めて対流を起こし、地球の自転に相当する回転板の作用で台風が渦巻くという仕掛。やり直しやり直しでなかなか根気がいる実験である。またマッチを仕掛けて台風の直上で爆発させて台風をつぶす実験では、台風はまたたくまに消滅するが、この爆発力はメガトン級の水爆１千万個分に匹敵するとか。これでは地球の方が吹っ飛んでしまいそう。

春まだ遠い蔵王山の麓、宮城県の湯原中学校では、今年巣立った子供達が集団就職で東京へと出発した。通いなれた学窓に別れを告げ、２メートルもの雪の中を両親や家族の人々に見送られた。故郷の友よさようなら、夜の白石駅で宮城県下から集まった６百人の集団就職第１陣に加わり、３月１８日、朝もやの上野駅に到着した。１６万人の求人に対しわずか４万人の求職者という大変な求人難、ヨウコソおいでくださいましたと、社長さん自ら下にもおかぬサービスぶり。娯楽設備やお風呂などはなかなか立派なもの。早速社長さんに工場内を案内され、新しい第一課の始まり。就職おめでとう。

韓国で開かれた第９回アジア映画祭に出席した日本代表団の一行が、東南アジア映画人をつれて羽田に帰ってきた。来年のアジア映画祭１０周年を記念する参加８カ国の合作映画も進められ、華やかな交流が期待されている。

あわただしい年の瀬を迎えた東京はこのところ物騒な事件が相継いで起こっている。東京駅八重州口の大和銀行八重洲支店では、おもちゃのピストルで行員を脅し現金８０万円を奪って犯人が逃走する事件がおき、江戸川区小岩では質屋の管理人が殺され４万１千円が奪われる強盗殺人事件。小学生の誘拐事件も起こった。浅草山谷では酒乱の夫を妻とおいが絞殺するという事件が発生。町を明るくしようと「地下たび供養」が山谷で開かれたが、その夜山谷の住民は食堂の客扱いが悪いと大暴れ。店内は足の踏み場もないほど壊され、警視庁は機動隊を始め１３００名の機動隊を動員して整理にあたったが、この騒ぎで女一人をふくむ１６人が検挙された、華やかな歳末風景と相継ぐ事件が交差する近ごろの東京。

恒例トリの市を迎えた浅草鷲神社に３０万の江戸っ子が詰めかけ、押すな押すなの人混みでゆっくり拝む暇もなし。名物の熊手は例年より３割高くなったが、不景気を追い払おうと縁起をかつぐ人で売行きはまあまあと、賑やかな手締めの音が年の瀬を告げている。

秋の観光シーズンを迎えた古都奈良。東大寺では国宝念仏堂の改修工事が完成に近づいた。しかし観光コースからはずれた般若寺や、海竜王寺では昨年の台風で被害を受けたまま、文化財保護委から９００万円の補修費がありながら、あとの１００万円を工面できずいまだ雨ざらし。このほど誕生した「奈良を守る会」は奈良を愛する人なら誰でも入会でき、同志を集めている。春日大社では秋の名物鹿の角切りが始まった。２８０年前から続いているこの角切りが終ると奈良の秋は深まっていく。

にせ札発見者には千円以上をさしあげると懸賞金までついた。あるデパートでは警視庁の専門家を招いて講習会を開いた。しかしニセ札は非常に精巧にできていて、大部分が銀行で発見されるなど捜査の手がかりがつかめない。昨年暮れから出回っているニセ札は最近新たに２種類が加わり１１種１４枚となり、新しいニセ札は東京、茨城、埼玉で集中的に使用されており捜査当局も緊張。地下印刷局を追って非常体制に入った。印刷者のリストも出来上り、２００人という空前の特別捜査班が編成された。ニセ札の使用されやすい競輪場では厳重な張り込みが行われているが全く雲をつかむような捜査でその苦労は並たいていではない。ニセ札に手をやいた大蔵省は１９６２年８月１３日ついに来年から新千円札を発行すると発表。事前に予告するという異例の措置をとった。