我が国航空技術陣が翼を失ってから１７年目に日本も国産機の時代を迎え、５人の設計者を中心にＹＳ−１１の制作が始まったのは今から５年前。世界的に有名な零戦を造った堀越二郎氏、隼戦闘機の太田稔氏、航研機の設計者木村秀政氏、かって軍用機１本やりだった我国航空技術は旅客機をもって再び世に問うことになった。航空技術研究所では、主翼を揺さぶって気流や突風に耐えるテストが連続的に３万時間も続けられている。こうした地上テストに並行して１９６２年８月３０日、小牧飛行場ではＹＳ−１１の試験飛行が行なわれた。５年間心血を注いだ生みの親、土井武夫・太田・堀越・木村の４氏が見まもる内に、全長２６．３メートル、幅３２メートルのプロップジェット旅客機が大空に舞い上がった。これまでの費用は５０億円。６０人乗りとしては滑走路は短く、国内線向けにすぐれた性能を示した。こうしてわが航空技術陣は１７年のブランクの末、再び大空の自信をとりもどした。

１９６２年６月２日東京の下町・南千住に総工費３０億円、３万５千人収容の「東京スタジアム」が誕生した。開場式には大毎オリオンズをはじめ、プロ野球パ・リーグ全球団が参加、新球場のこけら落しを祝った。２本足の照明灯、芝生の内野、ゴンドラ・シートを持つデラックス球場の始球式は、アメリカなみに一塁ベンチの上から。第１戦は大毎オリオンズが勝利を飾った。（週間話題）

一足早い南国の春を楽しもうと政界、財界の名士多数が特別機を仕立てて、東洋のナポリ鹿児島を訪れた。

１９６２年７月３１日に、台湾から門司に入港した貨物船、御影丸の船員から１７人のコレラ患者が発見され、８月２日乗組員が強制隔離された。保菌者が上陸した門司、下関では海水の使用や水泳を禁止、市民に予防接種をするなど、コレラ予防に緊急非常体制をしき、魚市場も水揚げがとだえてひっそりする有様。１６年ぶりの今度のコレラ侵入に対して、ワクチンは十分、心配はないとはいえ、空港などでは検疫をいっそう強化、台湾経由のお客さんは要注意と監視の目を光らせている。しかしなんといっても大きな打撃を受けたのは台湾バナナ。輸入禁止とともに、発生後入荷した４隻分輸入価格１億２千万円ぶんのバナナを棄てることにし、神戸では一万２千カゴものバナナが火焔放射器で焼きすてられた。もったいないとなげくゴリラ君、大好物のバナナの配給がなくなり、いささか頭にきたようだ。

総理府・徳安実蔵総務長官の発案で第１回交通問題公聴会が開催された。国民から生の声を聞き、交通マヒ対策の参考にしようというものである。トラック業者の京極さんは「なぜトラックだけが交通規制の対象になって、乗用車が放任されているのかという点に不合理があり、不満がある。」と規制の公平を申し立てれば、タクシー運転手の金谷さんは、都電の安全地帯の撤去を要求。トラック運転手の吉野さんも点滅式信号の普及を要望。オーナードライバーの立場から、小坂さんは交通取締りについて「違反者を罪人扱いする事は国民を敵にまわすことになる」と国民への信頼を強調した。

自民党の松村謙三氏は行き詰まった日中関係の打開を求めて北京を訪れた。周恩来首相はこれまでにない柔らかな態度で会談に臨み、貿易や文化交流を通しての積み重ね方式で両国間の正常化をはかりたいと述べ、昭和３３年以来断絶していた日中関係に雪解けを迎え、貿易の拡大に大きな期待が寄せられている。（週間話題）

ソビエト連邦は宇宙船のアベック飛行を実現するため、ボストーク３号の打ち上げから２４時間後にボストーク４号を発射し、同時に２機の宇宙船を地球周回軌道に乗せることに成功した。３号から送られるニコラエフ少佐の映像と声が地上のテレビにキャッチされ、フルシチョフ首相がお祝いのメッセージを送った。３号と４号の２つの宇宙船はたがいに通信を交わしながら軌道を巡り、３号は６４周目、ポポビッチ中佐を乗せた４号は４８周目に無事着陸。ボストーク２号の打ち上げから１年の沈黙の後、ソビエトの今回の成功はまたしても全世界を驚かせた。

ハリウッドのスター、ユール・ブリンナー（ユル・ブリンナー）が日米合作映画「あしやからの飛行」に出演するため来日。記者会見では「日本は第２の故郷です」と愛敬をふりまいていた。（週間話題）