戦後最大のタンカー事故で３６名全員死亡した第一宗像丸の合同葬儀が行なわれた。一方、全身火傷で入院していた乗員も４０人目の帰らぬ人となった。問題の京浜運河は、明治３３年（１９００）ハシケ専用の水路として作られた運河で、最近は川崎地区への石油工場の進出につれタンカーの出入りが目立って増えてきた。狭い運河に１万トン級の大型船と小型船がひしめく有様は、さながらダンプカーとカミナリ族が行きかう道路にも似て魔の水路と呼ばれている。この水路で整理にあたっているのは、運河入口にある鶴見信号所。限られた人員と不十分な設備しかなく、大型船の出入りに目を光らせるのがやっとという有様。大阪港も交通ラッシュ。中央突堤に建設中の航行管制塔も来年３月頃完成とあっては、急場に間に合わない。ますますふえる小型船のラッシュに海の白バイ巡視艇が取り締まっているが、違反する船は後をたたない。限界にきた海の交通ラッシュ、港の周りは危険が一杯という海国日本の現状である。

サラブレッド４歳馬３２頭が日本一を競う第２９回日本ダービーを迎えた１９６２年５月２７日の東京競馬場。詰めかけたファンは８万５千人、馬券の売上は７億１７００万円とダービー史上最高記録。昼からの雨のため悪コンディションの馬場。レースはカネツセーキがスタートからトップを奪ったが向正面で後退。コレヒサとかわったが、最後の直線に入ってフエアーウインが一気に追い上げそのまま逃げきった。２着は２頭が写真判定で同位、ダービーでは初めての事、ベテラン高橋英夫騎手はダービーに初優勝、またフエアーウインは栄冠とともに７００万円の賞金を獲得した。

中央労働委員会に持ち込まれた私鉄争議。第１回の平日ストにつぐ４８時間ストを前に深夜まであっせんが続けられた。１９６２年４月１５日午前零時すぎ、中労委は歩み寄り見せぬ労使双方に対し平均２４００円のあっせん案を提示、あとは自主交渉にゆだねたが、始発まぎわにどうやら交渉も妥結して足の悩みは解消した。こうして今年の春闘は事実上終わりを告げた。（週間話題）

全国８百の灯台をめぐる海上保安庁の灯台補給船「若草」が台風銀座で有名な室戸岬など四国各地をまわった。人里離れた灯台の人と外界をつなぐ年に一度の補給船の訪れは、この人達に海のサンタクロースとして親しまれている。早速船内で所員の健康診断。航行する船舶になくてはならぬ無線機の整備も大事な仕事。１年分の燃料やその他物資の陸上げを終ると次の灯台へ、喜びや悲しみを運ぶ「若草」の航海がつづく。

空からみた東京は道路工事の花盛り。空の玄関羽田から都心を結ぶ高速道路１号線、昭和通りも三宅坂もただ今工事中。掘り返し掘り返しで道路はがたがた。しかし肝心のオリンピック道路はさっぱり進まない。工事は至るところで寸断の有様。立派な道路と思ったらこの先工事中で行き止まり。用地買収はいちばん骨の折れる仕事だが、土地の値上がりのため来年度の予算まで使い果たしてしまった。ぼつぼつ家の取り壊しが始まったが、大部分が引っ越すのは来年の春ごろ。そして肝心な工事は予算不足から失業者対策費に頼っている始末。東京オリンピックまであと２年というのに、完成した道路は予定の約４０％にしかすぎない。いく多の難関が待ち受けるオリンピック道路の行方である。

大相撲春場所千秋楽、同点決勝の一番に佐田の山は横綱大鵬を下し、３６年初場所に続き２度目の優勝をかざった。この日大阪府立体育館の前は佐田の山をひと目見ようとするファンでいっぱい、待望の大関昇進も決って両手に花の佐田の山、天下一の笑顔。

このほど世界で初めてというプロ体操チームが誕生した。このチームは国体で活躍した高校選手や体操学校の卒業生ばかり。今日は熱海のホテルにお座敷がかかった。「体操うります」とこのチーム、目下あちらこちらのステージに引っ張りだこ。（週間話題）

憲法調査会の中曽根康弘委員は、首相公選論を説いて全国を飛び回っている。最近の派閥争いから生まれる内閣をなくするためにも首相は国民の手で選ぶという意見をぶちまくって各地で好評をはくしている。１９６２年９月２８日から２日間、憲法調査会は憲法改正に関する一般の意見を聴く最後の公聴会を東京で開いた。憲法改正反対を叫ぶ全学連は、公聴会を阻止しようと押しかけたが、警官隊にはばまれてしまった。会場では憲法改正の是非をめぐって各界代表が活発な意見を述べた。焦点となったのは戦争放棄に関する第９条の改正である。こうした公聴会の公述は憲法問題に対する世論の大勢を集約したものとして大きな意味を持っている。