１９６２年４月２９日、新緑の皇居広庭は天皇陛下６１歳の誕生日をお祝いする人波で埋まった。この４月には島津貴子さんに男の子の赤ちゃんが生まれ、陛下はこれで７人の孫のおじいさんになられた。この日を記念して陛下の３冊めの著書「那須の植物」が出版された。（週間話題）

交通安全週間にちなんで、東京足立区の踏切で人形を使ってブレーキテストが行われた。時速５０キロで走ってきた電車は、５０メートル手前で急ブレーキをかけたが間に合わず、人形はバラバラ。急ブレーキをかけて止まるまで８５メートルも進む事が判り、一瞬の不注意が事故をまねくことを示した。

アメリカは１９６２年４月２５日クリスマス島で大気圏内の核実験を再開した。アメリカ大使館前では、各団体の代表や一般の人々が繰り返し抗議のデモを行った。広島からも被爆者が上京して座り込みをはじめた。死の灰の谷間の日本では当面の課題は放射能の防御である。魚市場でマグロの検査が行われた。無線局は注意報を送る。実験海域はマグロのよい漁場であるがコースを変更して出航する。乗組員の安全を祈るとともに、私たちは核実験停止を叫びたい。

映画スターの野球大会が東京スタジアムで開かれた。趣向をこらした各社の応援合戦が華やかに繰り広げられる。試合は珍プレーの続出でファンをすっかり喜ばせた。（週間話題）

貿易自由化のあおりを受けて最近非鉄金属鉱山の不況が目立ってきた。政府が資金を出してくれれば、立派に採算が取れると道行く人に懸命のＰＲ。代表者達は田中角栄大蔵大臣に陳情、山をつぶさないでと訴えた。石炭不況の深刻さは誰でも知っているが、非金属鉱山の悩みは全く知られていない。すでに大手筋でも能率の悪い山は閉じて半分以上は安い外国産の鉱石に切り替える現状。宮城県の大土森鉱山は、朝鮮動乱以来我が世の春をうたった中小鉱山だが、自由化の波の前にひとたまりもなく閉山、２５８人全員解雇された。貿易自由化はヤマにも押し寄せ深刻な波紋を投げかけてきた。

１９６２年５月３日夜、常磐線三河島駅先で信号を誤認した下り貨物列車が脱線、進行してきた下り電車が接触転覆。更に上り電車がこれに突っ込み、線路上に避難した乗客をはねとばす大事故が起きた。救助作業は思うように進まず、救急車５４台が動員されたが、病院につかぬまに息を引き取る人も少なくない。死者１５７名、重軽傷者３８５名という、昭和２２年（１９４７）の八高線列車転覆事故に次ぐ戦後２番目の惨事となった。急きょ駆けつけた十河国鉄総裁は遺族の前にただ謝るばかり。人々は国鉄の誠意のなさを強く訴えている。現場検証の結果、信号の誤認と緊急信号の発煙灯がたかれていないことが分かり、貨物列車の水上機関士ら５人が逮捕された。常磐線は日に２２４本も走る過密路線で事故の起きないのが不思議なくらい。乗務員の不注意で事故が起きている折からこんな惨事が繰り返されぬよう望まれる。

このところ都内各所に続発するひき逃げ事故、１１０番の通報で警視庁捜査一課の初動捜査班が現場に急行、被害者は頭蓋骨骨折と全身打撲のため重体、早速現場付近で目撃者の聞込み。一方自動車修理工場の聞込みも連日行われ、この種の捜査には業者の協力が非常に必要。今回の事件ではタイヤ痕だけが手掛かりだった。足をたよりに約６百台近くの車をしらみつぶしに調べ、やっと被疑車輌が発見された。事故の傷跡も生々しく、血液反応を調査したところ被害者の血液型と全く同一、実地検証でもタイヤのスリップ跡もピッタリ、事故発生後わずか５日目にして審査陣に凱歌があがった。ひき逃げ捜査について警視庁は、事件解決の鍵の８０％は目撃者の協力であると、一般市民への協力を訴えている。（カメラ・パトロール）

白波をけたてて進む上陸用舟艇に乗って、陸上自衛隊第１１師団の無医村診療班が、北海道積丹半島川白地区に向かう。この辺りは道らしい道もなく交通は海にたよる陸の孤島、部隊は海上自衛隊の応援で目的地に到着。重い機材を陸上げして村の小学校に診療所を開いた。日頃医療に恵まれぬ村人で診療所は満員。婦人自衛官も活躍。手あつい治療を施す。また定期診断すら受けられぬへき地の子供たちの健康状態も調べられる。一方慰問を担当するのは音楽隊。村人の協力で開かれた浜辺のコンサートは、ふだん娯楽に乏しい村人に喜ばれた。こうして無料サービスの診断を終えた部隊は、村人からまた来て下さいと感謝の声に送られて、海路をつぎの目的地に向かって出発していった。