作家のＣ・Ｗ・ニコル氏は、１９８０年以来長野県黒姫高原に住み、執筆活動を行いながら、自然保護について多くの提言を行ってきた。今、ニコル氏は、黒姫で森づくりに取り組んでいる。伐採後、手入れされずに荒れていた森を再生し、自らの自然観を実践する森をつくろうというのである。“ＡＦＡＮ　ＡＲ　ＩＩＺＵＮＡ（飯綱山の麓に広がる谷間）”と名付けられたこの森で、森林の持つ力、森林の再生について語るとともに、日本の自然の魅力と保護について訴える。

「国際宇宙年」を迎えて、来たるべき宇宙地代を迎えようとしている人類がかかえる課題を考えるシリーズ。（１９９２年８月１６日～１９９３年２月１４日、全６回）◆第３回は、実用段階に入った宇宙ビジネスの最前線を追う。一部先進国が独占していた宇宙開発技術が、旧ソ連の崩壊などにより海外へ流出するようになった。おもに軍事・通信に利用されていた宇宙空間が、新技術開発の場として注目されている。第二の産業革命をもくろむ国や企業間の競争を追う。

鳥取県の中央に位置する三徳山。海抜９００メートルの全山を寺領とする三仏寺の堂塔が、峨々たる原始の森の中に点在して現存している。修験道の始祖・役行者が、断がいの岩窟に堂を投げ入れたという『投入堂』。人を寄せつけぬ絶壁の中空に、奇跡のように今も美麗な姿を見せている。目もくらむような急坂をよじ登り、鋭い仰角でしか全容のわからぬ三仏寺にカメラを運び、その昔いかにして絶壁の岩場に堂を建てたか、自然と人工の妙を探る。◆【国宝】三仏寺奥院（投入堂）◆【重要文化財】三仏寺納経堂、地蔵堂、文殊堂、蔵王権現立像〔三仏寺〕、聖観音立像

幡随院の武勇伝である。江戸の相撲取り、桜川は給金も安い下っ端の力士である。旅興業で母の急病を聞き、急いで江戸へ帰る途中、親方からもらった土産代も全てスリに取られてしまう。満足な食事にもありつけないところを折り良く店で休んでいた江戸の侠客、幡随院長兵衛が話を聞いて助けてくれる。桜川が発った後、鈴ケ森の盗賊の話を聞いた長兵衛は、桜川が危ないと後を追い、やはり桜川を襲っていた盗賊をこらしめ改心させる。◆脚色：野口哺堂、曲師：吉野静

箏曲の歌曲的な面白みを持つ『小督の曲』を、東京芸術大学教授・山勢司都子さんの解説で聞く。◆高倉天皇は琴の上手な小督の局を愛していたが、后徳子の父・平清盛は面白く思わなかった。清盛の意を察した小督は嵯峨野へ逃れる。悲しんだ天皇は馬を嵯峨野へ差し向け、隠れ家を探し出し宮中へ連れ戻す。◆琴の中に三味線の物語性の面白さを取り入れた、山田検校の作品の１つである。◆「小督の曲」箏・唄中田博之（重要無形文化財保持者）、高野和之、三味線室岡松孝、尺八山口五郎。◆副音声は英語

桜で知られる奈良県吉野町を東西に流れる吉野川の上流にある宮滝遺跡。縄文時代・弥生時代の遺跡、さらに斉明天皇ほかの離宮跡も発掘されているこの遺跡を、俳優であり考古学研究家でもある苅谷俊介さんが紹介、自説を語る。◆宮滝で東西交流があったことは、出土土器が東西各地の様式を持っていることで裏付けられる。また紀伊半島の徐福伝説、神武東征などと考えあわせると、南北の稲作伝搬ルートも存在したと苅谷さんは推測している。◆「その（東西南北の）クロスの位置に宮滝遺跡がちょうど乗っかっている」と苅谷さんはいう。

美女伝説の代表格、小野小町。妖しくも謎に包まれたその生涯を、京の随心院などに残された文物から描く。小町の美しさは絵にも描けないほどで、『三十六歌仙絵』にもただ１人、後姿で描かれている。女流歌人としてしか後世に伝えられない絶世の美女は、一方で老残の姿でこの世を去ったとも。小町に寄せる一抹のわびしさを思い、当時をしのぶ。◆【重要文化財】佐竹本三十六歌仙絵、阿弥陀如来坐像〔随心院〕◆その他】小野小町供養塔〔補陀洛寺〕、小野小町老衰像、小野小町文張地蔵尊〔随心院〕、小野小町像〔向野寺〕

千数百年の歴史を誇る奈良の伝統工芸にスポットをあて、その技と心を訪ねる。伝統工芸の源は正倉院の御物にあるとされ、現代の奈良の職人はその技術を習得し乗り越えようという心意気に燃えている。精緻な寄木細工の木画の木工芸、舞楽の面打ち、塗師の作り出す奈良漆器、奈良の鹿角を材料とする工芸、麻を基本とする奈良晒と蚊帳など、この町を流れていった伝統の重みが、人気の少ない奈良の裏通りに今も息づいていることを証左する。旅人は渡辺文雄。◆第１１１２回　◆興福寺【国宝】木画銀線象嵌経筒納曽利面鳳凰文様硯箱奈良公園