１９６１年１月１日、新年を迎えて池田勇人首相は明治神宮へ初詣、経済成長政策の成功を祈願した。一年の計は元旦にありと、社長以下全員出勤して、仕事始めはお得意回りと一斉に飛び出す会社もあった。１月４日は御用始め、東京証券取引所は景気よく大発会式で幕を開けた。街頭には初荷を満載した車の列が流れ、街は活発に動き始めた。お役所では、まだおトソ気分も抜けないご用始めだが、大蔵省だけは正月休みもそこそこに、夜通しかかって本年度予算をはじき出すのに大童。一年の計は１兆９３７４億円の枠を示した。「いくさなし」と語呂合せに縁起を担いだ大蔵省原案だが、早速始まる復活折衝。予算獲得で政界は動き始めた。また昨年から持ち越された病院ストは、１月６日行なわれた統一行動で今年の幕を開けた。

１９６１年４月６日、北海道千歳の第２航空団のジェット機４機が急激な天候異変で吹雪に包まれ墜落。死亡３人、行方不明１人を出す、航空自衛隊発足以来最悪の事故を起こした。あいまいな気象判断が犠牲者をだした。一方千葉県習志野の空挺隊には、第２次世界大戦中に作られた「空の神兵」の像が見出されて１６年ぶりに飾られた。さっそく元空挺隊だった戦士を招いて懇談会を開催、新しい空挺隊の腕前など披露した。近ごろの自衛隊の空の話題。

社会党・総評を中心とする日韓会談反対総決起大会は朴正煕議長の来日反対を決議。おりもおり韓国は李ライン水域で捕獲、抑留していた漁船５隻と漁船員７６人を釈放した。１９６１年１１月１１日、ものものしい警戒網がしかれた羽田空港に朴議長が到着。ボディーガードに護られながら池田勇人首相と握手。去る５月１６日のクーデターの後、朴議長は徹底した反共独裁政権を樹立、新聞報道を粛清して厳しい挙国体制をしいた。１２日、朴議長は首相官邸で池田首相と会談、日韓の諸問題を誠意を持って解決するよう申し合わせた。財産請求権や李ライン問題など、国民の納得が得られるかどうかが問題である。

１９６１年８月８日仙台高等裁判所。１２年に渡った松川事件の差戻し最終公判の日、門田実裁判長がいよいよ判決を言い渡す。死刑を含む１７人の被告に無罪の判決が下り裁判所周辺は歓声に包まれた。青天白日の身となった被告たちが法廷から出て来る。松川駅の売店で働く事件の犠牲者の妻は割り切れない気持ちである。松本清張さんは占領時代の謀略事件だと語る、果して真犯人はどこにいるのか、依然謎に包まれた世にも不思議な物語だ。

飛騨の白川郷に完成した高さ１３１ｍの御母衣ダムは、岩と土で築かれた日本最初のロックフィルダム。地下発電所の完工式が１９６１年１０月２４日、工事関係者を集めて盛大に行われた。

このほど初めてヨーロッパに乗り入れた日航北極回り１番機「鎌倉号」に招待されて島津久永・貴子夫妻も初めてヨーロッパめぐり。新婚旅行はヨーロッパでと、かねてからの念願がかなったおスタさんはロンドン・パリの名所古跡を訪ねながら、楽しい旅を続けた。

群馬県警察本部の内田常司さんは足跡を追う科学捜査の権威である。群馬に行ったら足あとを残すなといわれるくらい見事に型を採取し、ご自慢の手製の投影機で幾たびも犯人逮捕の足掛かりを見出して来た。３０年間に６万の足跡を調べ、コツコツと研究を続ける内田さんのグループは、立派な業績をあげている。静岡大学の平沢弥一郎先生は足の裏の博士。運動する人の足の裏の接触面が良く見えるピドスコープという機械を発明して、人は病気や疲労によって足の接触面積が変わることを論文で発表し、足の裏の博士が誕生した。足こそは人間の土台と、まずは足の裏を拝見。足の裏を基準にした健康体操を農家の婦人たちに紹介。先生の家族は曲げた爪先で歩く健康法を実行してみな元気だ。剣道５段である足の裏の博士は、このところハイヒールを履いて大学の廊下を闊歩している。

宇宙飛行から生還したガガーリン少佐はモスクワ市民に熱狂的な歓迎をうけた。人間衛星第１号はソ連の手で打ち上げられてフルシチョフ首相はハナ高々、米国は先をこされてしまった。１９６１年４月１５日キューバでは内乱が起り、反カストロ政府軍がキューバに上陸したが３日にして壊滅。反政府の成功をひそかに期待していた米国に深刻な打撃を与えた。モスクワなど共産圏の各地ではカストロ政権支持のデモ隊が米国の出先機関におしかけ、日本でも防衛二法案改正反対デモにキューバ政府支持のプラカードをかかげた。こうした中でライシャワー新大使がハル夫人と共に来日、日米の架け橋としてケネディ外交の送った新大使に期待がかけられている。