モスクワでの漁業交渉が難航を続けるなかで、１９５８年も北洋への出漁期が迫って来た。サジを投げて帰って来た平塚常次郎代表に代わって、赤城宗徳農相が首席代表に決まりモスクワにゆくことになった。一方、東京に集まった漁民代表たちは、あくまでも強い要求を打ち出している。１９５８年３月１７日、壮行会で岸信介首相らから激励をうける代表団、果たして行き詰まった交渉の打開がなるかどうか、前途の楽観は許されないようだ。

国鉄の東海道新幹線は、航空測量で建設へのスタートをきった。高度５千メートル、高く澄みわたった秋空を、測量機は東海道を一路西へ向かう。特殊カメラでの空中写真撮影がされる。直ちにフィルムは現像され写真をつなぎ合わせて写真図ができあがる。写真図はステレオプラニグラフにかけられ、自動的に地図が作られる。こうして東海道新幹線の地形調査は着々と進められている。

１９５８年４月９日、解散風の吹く国会で、一万田尚登蔵相の不信任案が提出された。しかし、問題の斡旋収賄罪と暴力取締法は、与野党が妥協して法務委員会であっさり可決。ところが１０日の大蔵委員会で、社会党の横銭重吉議員が『千葉銀行の不正融資問題に関連して政府与党幹部に疑惑がある』との爆弾発言を行ったところから議場は紛糾、一波乱起きそうな形勢となった。しかし国会の駆け引きもさることながら、気になるのは選挙のこと。自民党の河野一郎さんが地方の演説会へ出かければ、社会党の鈴木茂三郎さんは基地反対を続ける村へ。政界はもう選挙戦に明け暮れている。

１９５８年に入って生糸の輸出は不振をきわめている。横浜港の倉庫には、政府の買い上げた生糸が輸出のあてもなく山積し、取引所では生糸相場が暴落を続けた。そのあおりを受けた蚕糸業界は倒産が相次ぎ、茨城県古河市の飯島製糸でも６月からついに工場を閉鎖した。生活の糧を失った女子工員さんたちは退職金などを要求。しかし団体交渉は長期化し、女工さんたちは造花やビン洗い、あるいは農家の畑仕事を手伝って細々と生活している。斜陽産業といわれる蚕糸業界に働く人たちに温かい対策が望まれている。

長い間、アルジェリア問題で悩み続けてきたフランスで、１９５８年５月１３日、パリ市内の右翼団体が強硬策を要求して警官隊と衝突、一方アルジェリアでも軍部に押された居留民が暴動をひき起こした。本国では、現地の反政府の動きに呼応したドゴール派の動きが目立ち、このためフリムラン新首相は緊急事態を宣言した。共和制体の問題をめぐって、フランスは重大な危機に直面している。

このほど来日したオーストリアのルディ・マット氏が、群馬県万座スキー場でスキーの妙技を披露した。アルプスの麓オベルスドルフで開かれた国際スキー大会では、ヨーロッパのジャンパーたちが、冬空に目も冴える美しい弧をえがいて技を競った。

１９５８年も豊年、秋祭りで賑わう新潟県の小千谷町。佐渡おけさや仮装行列が雪国らしい雁木の通りを囃していく。祭りの本命は、この土地一帯（古志郡）の山里に古くから伝わる豪壮な牛角力。威勢のいい牛とり若衆に囲まれて、２００貫（７５０ｋｇ）もの猛牛が角を突き合わせて技を競い、負けた牛は観客席に逃げ込んでスリル満点。勝った牛にはお酒を振る舞って勝利を祝う。結びの一番は東西横綱の対決、角を合せて双方慎重な仕切りとなる。

伊豆七島の神津島に、私たち阿佐ヶ谷中学の写真クラブ員一行は、社会科の勉強をかねて記録映画撮影のためやって来た。島民は大変信仰が厚く、朝夕お墓を清めたり、荷物を頭に乗せて運ぶ風習など珍しいことばかり。同じ東京都でも、こちらでは漁業で生活をしている。丁度、年に一度のお祭りにぶつかり、青年団の相撲や、無形文化財の“カツオ釣り”が撮影出来た。この時は、カメラを持ってうろうろしたり、録音係が戸惑ったりしたが、島のお友だちとのキャンプを最後に楽しいロケーションを終った。