日ソ交渉首席全権の決定を迫られた政府与党の首脳部は、１９５６年７月１３日、首相官邸に緊張した面もちで複雑な党内事情の調整に乗り出した。結局、重光葵外務大臣が首席全権を引き受け、松本俊一全権と共にモスクワに行くことになった。まさかと思っただけに岸信介幹事長は複雑な面持ち、これに対して冷飯組の吉田茂派らは早速勢揃い、励まされた重光も気を良くしている。日ソ交渉成否のカギといわれる領土問題は、ハボマイ（歯舞）、シコタン（色丹）の帰属をめぐって、国民注目の的となっている。

１９５６年３月１５日、総評（日本労働組合総評議会）は総決起大会で気勢を上げた。「春闘のヤマ」といわれる炭労（日本炭鉱労働組合）ストは、会社側の「ロックアウト」宣言で重大な段階に突入、倉石忠雄労働大臣は、労使の代表を招いて円満解決を要望。しかし全国５４の炭山は、１９５６年３月１９日ついに一斉に事業場を閉鎖した。「ヤマ（炭鉱）」は一応平穏にその日を迎えたが、激しい労使の対立は、その解決を困難にしているようである。（週間話題）

クリスマスが近づくとパリの街は美しいネオンで飾られ、遊園地では子供たちが楽しそうに遊んでいる。東京のクリスマスは人の渦、前夜の銀座は１２０万の人で埋まった。ディズニー・プロ「鹿皮服の男」の主人公フェス・パーカーが来日、調布の孤児園を訪れて良い子たちと楽しくクリスマスを祝った。

３００年の伝統を誇る福島県白河の馬市は、１９５６年９月２９日がフタ開け。東北、北海道から４００頭が出場して大変な賑わいだ。つき添って来た家族たちは赤飯で愛馬と最後の別れを惜しむ。セリが始まると威勢のいい掛声とともに、白河特有の符牒で取引が行なわれ、シャンシャンと手打ちがすめば、売れた馬は業者の手に渡され、家族との別れを惜しみながら全国に散って行くのである。

ポーランドの芸術院では学生の実験劇場が盛んだ。これはご自慢の一つ、指先だけの動きで、人間の微妙な心理を表現した野心作である。

第２回一般・学生対抗陸上競技大会は、１９５６年９月１６日、小田原の城山競技場で行なわれた。男子１００ｍ、女子８０ｍハードル、ハンマー投げ、女子の円盤投げとヤリ投げ等に好記録が続出、なかでも期待の小掛照二選手が、３段跳びで１５ｍ９６の今年度世界第２位の大記録を出した。この大会で第１次オリンピック陸上代表９名が選ばれた。

第１３回学童歯磨き訓練大会が、１９５６年６月４日、神宮外苑競技場で華やかに開かれた。都内１８０校の小学校と、幼稚園の良い子たち４００００人が集まり、元気に歯磨きのおさらい、そして「くまの子りすの子」の歌を仲良く歌った。口腔衛生週間の一コマである。（週間話題）

日ソ国交回復批准の臨時国会は、スト規制法をめぐって冒頭から与野党の正面衝突となった。空回り４日間、益谷秀次衆議院議長の斡旋で、１９５６年１１月１６日にやっと本会議が開かれることになった。鳩山一郎首相の所信表明に対し、野党は一斉に引退問題に矛先を向け、与党のお家騒動を激しく攻撃、スト規制法に対する厳しい世論もからんで、鳩山内閣の金看板「日ソ復交」も土壇場まで難航しそうな形勢である。