１０月１日は都民の日。１９５６年は太田道灌の江戸築城５００年を記念して、大東京祭が開かれた。世界２２ヵ国の市長も出席して盛大な式典が行われた。皇居に今も残る江戸城の面影、明治から大正、昭和と移りゆく東京の姿、現代の複雑な表情。大東京の歴史は、そのまま日本の歩いた姿を見せているようである。

３００年の伝統を誇る福島県白河の馬市は、１９５６年９月２９日がフタ開け。東北、北海道から４００頭が出場して大変な賑わいだ。つき添って来た家族たちは赤飯で愛馬と最後の別れを惜しむ。セリが始まると威勢のいい掛声とともに、白河特有の符牒で取引が行なわれ、シャンシャンと手打ちがすめば、売れた馬は業者の手に渡され、家族との別れを惜しみながら全国に散って行くのである。

東南アジアの各国から日本に留学生が続々やって来た。おもちゃ、鉄道、医学の勉強など、本場のビルマから仏教の勉強にも来ている。実習の合間には、仲良く日本語の勉強に大わらわだ。（週間話題）

東京をはじめ武蔵野にある古代遺跡は、風雨にさらされたり、工事のため潰されようとしている。国宝級の建築物も崩れかかっている。福島県須賀川の「蝦夷穴」と呼ばれる遺跡も、今は浮浪者の住家という情けない有様。大阪府堺市郊外の「いたすけ古墳」も、宅地に売られて姿を消すところだったが、地元の人々の反対で危うく命拾いした。こうして、予算の裏付けの乏しいわが国では、文化財の保護は心ある人々の熱意だけにかかっているようだ。

第２８回選抜高校野球優勝戦は、１９５６年４月９日、甲子園で中京商と岐阜商の間で行なわれ、中京は４対０で岐阜を破り、１８年ぶりに再び優勝を飾った。（週間話題）

砕氷船として装備を急ぐ南極観測船「宗谷」、プリンス・ハラルドに建てられる宿舎の組立訓練、１９５６年１０月４日には５３名の全隊員が顔を合わせるなど、晴れの門出を前に、南極観測隊は最後の仕上げを急いでいる。

鳩山一郎首相ら日本全権団一行は、１９５６年１０月１２日午後３時半、モスクワ中央飛行場に到着。ブルガーニン首相らソ連首脳部の温かい出迎えを受けた。次いで鳩山首相はブルガーニン首相とオープンカーに同乗して、両国の国歌吹奏の中を儀礼兵の閲兵を行なった。こうして、日ソ交渉は１９５６年１０月１５日に再開する運びとなったのである。

１９５６年１１月１日、鳩山一郎全権の一行は、空港始まって以来の歓迎陣で埋まった羽田に帰国した。留守家族や漁業団体の歓呼に応えながら、交渉妥結の挨拶を済ませた鳩山は、凱旋将軍さながらの歓迎を受けて音羽御殿に帰った。２日には社会党の鈴木茂三郎委員長を招いて、日ソ共同宣言の国会承認について協力を求めた。こうして、政局の焦点は首相引退の時期に絞られて来た。箱根に籠った鳩山は一人静かに構想を練っている。