深刻な対立を続けていた炭労（日本炭鉱労働組合）争議は、１９５６年３月３１日夜、中山伊知郎中労委（中央労働委員会）会長の第２次斡旋案を労使共に受諾したため、やっと解決した。ロックアウトも解かれ、ヤマ（鉱山）の従業員たちは久しぶりに坑内に入った。そして黒ダイヤ（石炭）が力強く流れ出る。（週間話題）

１９５６年９月６日から東京と京都で国際遺伝学会議が開かれ、開会式には世界２１ヵ国の学者が一堂に集まった。ソビエトのルイセンコ学説の権威も参加している。各地で日本の遺伝学を紹介する数々の資料が展示され、各国の学者の目を見張らせた。長年飼育と改良が重ねられてきた蚕、美しい尾を持つ尾長鶏、様々な色と形を誇る金魚、そして研究が続けられるアサガオの変種など、すべてが遺伝の神秘を物語る。中国では甘藷と夕顔の交配から生まれた新種によって、今までの１０倍の藷の収穫をあげることが出来たという。遺伝の研究は人類にとって大きな問題である。

税金に不平不満のある方はどうぞと、国税庁では納税者の声を聞く旬間中、全国に苦情相談所を作った。一万田尚登大蔵大臣も街に出て愛嬌よく質問に答えている。（週間話題）

１９５６年３月３０日の朝、韓国から９６名の日本人婦女子が、１０年ぶりに門司港に引き揚げてきた。同じ日の夜、日ソ交渉の行き詰まりから松本俊一全権が羽田空港に帰った。報告を聞く鳩山一郎首相も沈痛な面もち。重光葵外相も思案投首。こうした成行きにソ連抑留者の留守家族は、総決起大会を開き、首相に面会を求めて詰めよったが、満足な答弁を得られず肌寒い堀端で悲痛な座り込みに入った。

飛騨の山深くでダムの建設が進められている。湖底に沈もうとする白川村の人々は、ふる里との別れを諦めきれぬ表情で迎えている。大家族の風習が生んだ大きな合掌造りの家、スノコ天井の下で黙々と働く人の姿に古い伝統が残されている。１９５６年９月１５日は高山の秋祭り、飛騨の匠の技を見せる見事な山車は雪国の冬を告げている。

冬富士の雪と氷を踏んで若い登山家が幾組も続いて行く。あちこちにテントが立ち並び山は時ならぬ賑わいだ。山頂の観測所では、臼を出してもうお正月の準備を始めている。

終戦の日、８月１５日。１９５６年も皇居前に襟を正す参拝者の姿が見られる。しかし、街は戦いの苦しみも忘れてしまったような表情である。軍人の銅像は片隅に忘れられ、未亡人は内職で細々と暮らしている。自衛隊はふくれあがり、基地のために人々は肩身の狭い思いをしている。日ソ交渉は思うにまかせず、目下難航中だ。こうしたさなかの１９５６年８月１９日には、ナホトカから第８次のソ連帰国者が舞鶴に帰って来た。しかし、日本国民は日一日と前進を続けている。

１９５６年３月１３日の昼頃、東京都中央区西八丁堀の倉庫から出火、あっという間に両隣にも火がまわり、３名が焼死した。例によって黒山の野次馬で、大変な騒ぎだった。（週間話題）