帰国船「大成丸」は、１９５６年３月６日、春浅い舞鶴に入港、戦犯として抑留されていた１９名の人々は、肉親に迎えられてそれぞれ故郷へ急いだ。（週間話題）

紺碧の海に浮かぶ緑の島々、沖縄。かつて石造建築の粋を誇った琉球王の墓は見るかげもなく、村人の墓も夏草に埋もれている。しかし、南国特有な香りをたたえた漆器や、名高い紅型染め（びんがたぞめ）など琉球が生んだ民芸品の素晴らしさは、伝統の根強さを物語っている。子供たちは、まだ藁葺の貧しい校舎で勉強を続けているが、軍用地についてのプライス勧告は島の婦人たちに新しい自覚を促している。こうして沖縄に新しい時代が訪れようとしている。（倉持特派員撮影）

中東とハンガリー動乱の嵐の中に立って、国連は重大な試練を受けている。１９５６年１１月５日、安全保障理事会はソ連の提議した「エジプトに対する米ソ両国の軍事援助」案を、４対３で否決した。この頃、アルジェリア駐屯のフランス軍はアルジェー港に集結、スエズ戦線に向かって増援を急いでいた。一方ロンドンでは、２万の大群集が集まりイギリス軍のエジプト攻撃を非難、イーデン内閣に厳しい批判を加えた。ハンガリーの首都ブタペストは、市街戦のあとも生々しく死の町の様相を見せている。ソビエト軍との最後の一戦を挑むハンガリー軍戦車の絶望的な姿、戦火に家を失った市民たちに寒さと飢えが迫っている。このような中で行なわれたアメリカ大統領選挙は、アイゼンハワー大統領の圧倒的勝利に終った。スエズ戦線はひとまず停戦を見、全面戦争の危機は一応去ったが、世界の平和は今後の大国の動きにかかっている。

北アフリカのチュニジアでは、フランス軍の撤退を要求するデモが続き、更に緊迫の度を増している。ポーランドの首都ワルシャワでは、新政府の誕生にあたって４０万人の市民が文化科学宮殿前の大広場に集まった。東欧諸国の一つとしてその動向が注目されている時、ゴムルカ党第一書記が新政策を国民に力強く訴えている。全国的な反ソ暴動を展開したハンガリーでは、ソビエト軍の進撃によってナジは逮捕され、親ソ政権が樹立された。一方、国連安全保障理事会では、イスラエル軍のエジプト侵入を収拾すべく、アメリカ代表は即時停戦を呼びかけた。しかし英仏両国は拒否権を発動、ついに米ソの反対を押し切って部隊をスエズに派遣、中近東は風雲急を告げている。こうして雪解けも束の間、世界は再び戦争の危機にさらされようとしている。

映画監督・溝口健二は、１９５６年８月２４日、白血症のため京都府立医大病院で亡くなった。享年５８歳。自宅には弔問客がひきもきらず、今さらながら故人の映画界に遺した大きな足跡が偲ばれた。（週間話題）

第１７回ヴェニス国際映画祭で、日本映画はこの年初めて設けられたサン・ジョルジオ賞を受け、市川崑監督の「ビルマの竪琴」が最優秀作品の折り紙をつけられた。日本映画の水準の高さを認められた明るい話題であった。（週間話題）

アメリカ南極探検隊の砕氷船エディスト号は、流氷と闘いながらロス海の氷原に入った。バード少将を隊長とする探検隊は、ペンギンやアザラシが愛嬌をふりまく中で、待望の基地建設作業を始めた。

１９５６年５月２０日の日曜日、両陛下は皇居内の武道大会をお揃いで御覧になった。この日、皇太子さまと義宮さまは久しぶりに江戸川堤の遠乗りへ、沿道はどこまでも大変な人だかりだった。（週間話題）