１９５６年５月８日、高碕達之助国務大臣を首席とする日比賠償全権団は、調印のため盛大な見送りのうちに空路でフィリピン・マニラへ向かった。９日、マラカニアン宮殿で正式調印を行ない、ここに両国民のいまわしい戦争の痛手は一応落着を見るに至った。

１０月１日は都民の日。１９５６年は太田道灌の江戸築城５００年を記念して、大東京祭が開かれた。世界２２ヵ国の市長も出席して盛大な式典が行われた。皇居に今も残る江戸城の面影、明治から大正、昭和と移りゆく東京の姿、現代の複雑な表情。大東京の歴史は、そのまま日本の歩いた姿を見せているようである。

チベットの町ラサは、このほど完成した国道を祝ってお祭り気分である。初荷を積んだ自動車隊は、この世界の屋根を貫く新コースへ旅立ち、西チベットの人々に沢山のお土産を届けた。（週間話題）

日曜と重なったお盆の１９５６年７月１５日、浅草は若い人で大賑わい、お地蔵さまはおばあさん達で繁盛している。浜辺も山も押しかけた人波で満員、お盆と共にいよいよ真夏がやって来た。

１年半にわたった日ソ交渉も、１９５６年１０月１８日、河野一郎とフルシチョフ会談でついに妥結。モスクワ電によって政界は急に慌ただしさを加えて来た。政府は臨時閣議を開いて日ソ共同宣言を承認。１９日午後５時５０分（モスクワ時間）、日本時間１９日午後１１時５０分、クレムリン宮殿で調印式が行われた。チフヴィンスキー・ソ連漁業代表も上機嫌で記者会見。この日品川に着いた引き揚げ者の顔もほころんでいる。島へ帰る日を待つ歯舞村の人々の明るい表情。とにかく１１年ぶりに日ソ国交回復の第一歩が訪れたのである。

群馬県碓氷郡安中町に古くから伝わる操り人形が、日本演劇学会の人々の手によって調査された。これは胴体の中にカンテラを入れる灯篭式の人形で、年寄りの記憶をたどって、尊い村の芸能が６１年ぶりに陽の目を見た。

ポーランドのポドグロッツィーは夏になるとこどもの町になる。中でも１番人気のあるのはこどもの鉄道。車掌も機関士もお客さんもこどもばかり、みんな大はしゃぎだ。ポーランドのこどもの楽しい夏休みの１日である。（週間話題）

鳩山一郎首相の訪ソ問題はすったもんだでなかなか決まらず、しびれを切らしたシベリア抑留者の留守家族は、１９５６年９月７日、東京日比谷で大会を開き、続いて初のデモ行進。一方財界では、弱体鳩山内閣の退陣を希望すると異例の三下り半を突きつけ、自民党に一波乱を巻き起こした。社会党が“早期妥結鳩山訪ソ”に協力すると激励すれば、当の自民党は相変わらずの小田原評議。強気の河野一郎農相一人やっきとなって駆け回っている。