鳩山一郎首相の訪ソ問題はすったもんだでなかなか決まらず、しびれを切らしたシベリア抑留者の留守家族は、１９５６年９月７日、東京日比谷で大会を開き、続いて初のデモ行進。一方財界では、弱体鳩山内閣の退陣を希望すると異例の三下り半を突きつけ、自民党に一波乱を巻き起こした。社会党が“早期妥結鳩山訪ソ”に協力すると激励すれば、当の自民党は相変わらずの小田原評議。強気の河野一郎農相一人やっきとなって駆け回っている。

１９５６年５月２１日未明、ビキニ環礁で初の水爆空中投下の実験が行なわれた。午前５時５０分、Ｂ５２爆撃機から投下された爆弾はナム島の上空で爆発した。巨大な火の玉とともに無気味な原子雲があたり一面に広がって行く。この度の実験は、アメリカで最初の空中投下というばかりでなく、水爆が実際に使用できる兵器として立証されたものと言われる。わが調査船「俊鶻丸」は、一昨年に続いて再び放射能の海を調査するため、１９５６年５月２６日、東京竹芝桟橋を出発、南の海へ向かった。そして荒波にもまれながら観測を行ない、死の灰の恐怖と取り組んでいる。

輸送力の行き詰まりに悩む国鉄では、せめて、大都会のラッシュだけでも緩和させようと、東京の山手線と京浜線の分離工事を進めている。あわせて駅の通路も拡張中。そのような中で、１９５６年９月１日、国鉄５ヵ年計画を発表した。ところが、５ヵ年計画の完成には５０００億円ものお金が要るそうだが、どうしてひねり出すか、ちょっと気にかかるところである。

「小選挙区法案」をめぐって与党と野党の対立は益々激しく、委員会はいずれももみ合い。法案を本会議に移すまいと、社会党は牛歩戦術と動議戦法で引延ばしにやっきだ。益谷秀次衆議院議長は斡旋案を出したが、社会党の同調を得られず、議長の職権で開いた会議はついに与野党の激突で大混乱に陥った。しかし、１９５６年５月１日に到って、自民、社会両党とも一応議長の斡旋案を承諾、やっと審議は軌道に乗ったが、小選挙区法案の前途は益々多難だ。

故国への土産にお神楽を稽古するアメリカ娘、もうちょっとした名取だ。こちらは武者修行のアメリカの兵隊さんの居合術、なかなか堂に入ったものだ。（週間話題）

快晴に恵まれた１９５６年５月１日、全国６００の都市で第２７回メーデーが華やかに行なわれ、大阪、福岡、札幌などで働く者の大行進が繰り広げられた。東京の中央メーデーにはおよそ５０万人が参加、広い明治神宮外苑も人波でぎっしり埋った。祭典気分はいよいよ盛り上がり、デモ行進に働く者の力強い足音を響かせた。全国での参加者はおよそ１５０万人、戦前戦後を通じて最大のメーデーだった。

中東とハンガリー動乱の嵐の中に立って、国連は重大な試練を受けている。１９５６年１１月５日、安全保障理事会はソ連の提議した「エジプトに対する米ソ両国の軍事援助」案を、４対３で否決した。この頃、アルジェリア駐屯のフランス軍はアルジェー港に集結、スエズ戦線に向かって増援を急いでいた。一方ロンドンでは、２万の大群集が集まりイギリス軍のエジプト攻撃を非難、イーデン内閣に厳しい批判を加えた。ハンガリーの首都ブタペストは、市街戦のあとも生々しく死の町の様相を見せている。ソビエト軍との最後の一戦を挑むハンガリー軍戦車の絶望的な姿、戦火に家を失った市民たちに寒さと飢えが迫っている。このような中で行なわれたアメリカ大統領選挙は、アイゼンハワー大統領の圧倒的勝利に終った。スエズ戦線はひとまず停戦を見、全面戦争の危機は一応去ったが、世界の平和は今後の大国の動きにかかっている。

オーストラリア・メルボルンの第１６回オリンピック大会は、参加６７ヵ国（ナレーションの６８ヵ国は誤り）の選手によって激しいゲームを展開、新記録が相次いでいる。ハンマー投げでは、アメリカのコノリーが６３ｍ１９ｃｍのオリンピック新記録で優勝。円盤投げもアメリカのオーターが５６ｍ３６ｃｍのオリンピック新記録で優勝。砲丸投げもまた、アメリカのオブライエンが１８ｍ５７ｃｍのオリンピック新記録で優勝した。注目の１００ｍ決勝、アメリカのモローが１０秒５で１着、２着アメリカのベーカー、３着オーストラリアのホーガン。女子槍投げの決勝、志田順子は４４ｍ９６ｃｍで１２位。女子走り幅跳びでは、ポーランドのクシェシンスカが６ｍ３５ｃｍの世界タイ・オリンピック新記録で優勝。女子８０ｍハードルは、オーストラリアのストリックランド・デ・ラ・ハンティが１０秒７のオリンピック新記録でゴールし優勝。５０ｋｍ競歩ではニュージーランドの新鋭リードが、４時間３０分４２秒８で優勝。日本選手に大きな期待がかけられた三段跳びの決勝、桜井孝治選手は１５ｍ７３ｃｍ、７位で惜しくも入賞を逸し、ホープ小掛照二は１５ｍ６４ｃｍと８位に終った。ブラジルのダ・シルバが１６ｍ３５ｃｍのオリンピック新記録で優勝。待望のレスリング・フリースタイルでは、池田三男選手がウェルター級で初の金メダルを、笠原茂選手がライト級の銀メダルをものにした。そして笹原正三選手はフェザー級で優勝、日本に二つ目の金メダルをもたらし万丈の気をはいたのである。