新教育委員会法案の審議をめぐって、参議院の与党と野党の対立はますます激化、廊下でも本会議場でも激しいもみ合いが続き、ついには１０数名の負傷者を出して救急車も駆けつける騒ぎとなった。１９５６年６月２日、松野鶴平議長はついに警官隊５００名の出動を要請、警官の一部は本会議場にまで入った。警官警護のもとに新教育委員会法案は可決成立、政府与党は祝杯をあげ、社会党は次の機会に備えている。こうして幾多の波乱を巻き起こした第２４通常国会は、警官隊の議場入場という一大汚点を残して、１９５６年６月３日閉会。与野党の決戦は、来るべき参議院議員選挙に持ち込まれることになった。

１９５６年９月６日から東京と京都で国際遺伝学会議が開かれ、開会式には世界２１ヵ国の学者が一堂に集まった。ソビエトのルイセンコ学説の権威も参加している。各地で日本の遺伝学を紹介する数々の資料が展示され、各国の学者の目を見張らせた。長年飼育と改良が重ねられてきた蚕、美しい尾を持つ尾長鶏、様々な色と形を誇る金魚、そして研究が続けられるアサガオの変種など、すべてが遺伝の神秘を物語る。中国では甘藷と夕顔の交配から生まれた新種によって、今までの１０倍の藷の収穫をあげることが出来たという。遺伝の研究は人類にとって大きな問題である。

天皇・皇后両陛下は１９５６年１月３１日、東京京橋の国立近代美術館においでになり、展覧会「現代の眼」のアジア各国の伝統美術をご覧になった。（週間話題）

１９５６年７月２８日、神宮競技場で行なわれた全日本選抜陸上競技大会では、ハンマー投げをはじめ数々の日本記録が更新された。中でも小掛昭二選手は、三段跳びで１５ｍ８８を跳び、本年度世界第２位、宿望の１６ｍに迫る大記録を出した。（週間話題）

国民医療確保の声はますます高まり、１９５６年２月２３日「健康保険改悪反対」をかかげて、東京都民大会が開かれた。国会には結核患者代表が政府・与党の首脳部と会見、病人を困らせるような法律は止めて欲しいと切実な声を伝えた。一方、税務署では納税申告の相談で大賑わい。人気スターも、町のおかみさんもなかなかの粘り方。いずれも、国民にとっては共通の悩みである。

南氷洋に繰り広げられた捕鯨オリンピックで、日本の日新丸船団は見事世界新記録をつくり、１９５６年４月６日に５ヵ月ぶりに横須賀に入港した。お土産は鯨の他に愛嬌者のペンギン君だ。（週間話題）

鳩山一郎首相ら日本全権団一行は、１９５６年１０月１２日午後３時半、モスクワ中央飛行場に到着。ブルガーニン首相らソ連首脳部の温かい出迎えを受けた。次いで鳩山首相はブルガーニン首相とオープンカーに同乗して、両国の国歌吹奏の中を儀礼兵の閲兵を行なった。こうして、日ソ交渉は１９５６年１０月１５日に再開する運びとなったのである。

１９５６年９月２０日、モスクワへ先発する松本俊一全権は、鳩山一郎首相、重光葵外相に挨拶をすませ、羽田空港から出発した。松本全権の今度のモスクワ行きは、ブルガーニン首相返書の真意を確かめるためというややこしい仕事。鳩山は首を長くして良い知らせを待っているが、１１月引退説まで飛び出す今日この頃、その身辺はなかなか微妙な動きを見せている。