テレビ番組のスタッフや出演者が、自ら制作した番組を振り返る人気公開セミナー「名作の舞台裏」第40回は、1990年に日本テレビで放送されたドラマ『外科医 有森冴子』を取り上げます。番組出演者や制作者のトークを中心に、優秀な外科医かつ自立した女性をヒロインとして描いた革新的なドラマの魅力を振り返ります。
2016.1.16 終了しました。セミナーの抄録をこちらに掲載しています。
【番組概要】
都会の大病院に勤務する外科医・有森冴子(三田佳子)を主人公に、医師や看護師、患者たちの愛や葛藤、対立、苦悩などの人間ドラマをヒューマンタッチで描いたシリーズ。トレンディドラマ全盛期に、人間としての生き方や医療の在り方といった社会的テーマに取り組み、好評を博した。また"敏腕外科医の女性主人公"は、その後医師だけでなく、検事や弁護士など、男性と互角に渡り合うプロフェッショナルな職業の女性を主人公にしたドラマの先駆けともなった。90年の第1シリーズ放送後、92年には第2シリーズが放送されたほか、90,91,93,2000年とスペシャルも放送され、根強い人気を誇った。(1990年4月14日~6月30日ほか/日本テレビ)
【セミナーのようす】
85年の男女雇用均等法制定や「女性の自立」という時代のムードを背景に、「一番とんがった女性を描きたかった」という石橋。三田は「実際に大病院を見学し、医師の仕草や行動、服装や持ち物に至るまで詳細に観察した」という。手術シーンには毎回医師が立ち合い、リアリティを追求した。
川原が「三田さんありきで書いてほしいと頼んだ」という井沢によると、「ドラマとは"対立と非日常"」。ある男性患者を挟んだ元妻(有森)と現在の妻、その元夫を元妻が執刀するという第1話は、見事な「対立と非日常」の物語だ。また、世界の飢餓や核問題に触れながら「自分があと20年外科医を続ける間に手掛けられる患者は千人に満たない。一人一人と大切に向き合うことが務め」という台詞からは、人類の問題を前に"医者としてのあるべき姿"を模索する、強く深いメッセージが伝わってくる。
会場には「この番組を見て医療の道を志し、現在は医師や看護師として働いている」という参加者も。視聴者の人生を方向づけた名作に、会場からは大きな拍手が送られた。