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【セミナー】  公開セミナー「名作の舞台裏」レポート:2013年度

名作の舞台裏 第35-38回『マークスの山』『御宿かわせみ』『ミエルヒ』 当日の様子をレポートします。


◇公開セミナー・第35回名作の舞台裏 『マークスの山』◇

日 時 : 2013年4月20日(土)
会 場 : 情文ホール(横浜情報文化センター6階)
ゲスト : 上川隆也(出演)、水谷俊之(監督)、青木泰憲(制作)
司 会 : 渡辺 紘史(放送人の会)
主 催 : 放送人の会、(財)放送番組センター

<作品の概要>
 原作は、警察小説の最高峰といわれる髙村薫の直木賞受賞作。硬質な文体、重厚なテーマ、緻密な描写による圧倒的なリアリティによって紡ぎだされた世界観を持つ本格社会派小説。今も多くのファンを獲得し続ける"合田雄一郎"シリーズの原点でもある。WOWOWの連続ドラマWで放送されたこの作品は、合田雄一郎警部補を演じる上川隆也をはじめ、名作に相応しい実力派キャストとスタッフが勢揃いし、原作の骨太な世界観を見事にドラマ化した社会派ミステリーの傑作。(2010年10月17日~11月14日放送/全5回/WOWOW)

<セミナーのようす>
 作品のきっかけを青木は「制作会社から話をもらい、すぐにやりたいと思ったが、映画に一度なっており、2時間ドラマだと似てしまうので企画が通らなかった。連続ドラマ枠が始まり、連続物であれば映画とは違う形にできるということで実現した」、水谷も「原作は、組織と個人、原罪、孤独など、其々のテーマが濃密に描かれている。その要素を表現するには、5~6回位の連続という枠があればできるかもしれないと思った」と振り返る。合田雄一郎という刑事役について上川は「脚本に忠実に、一人間として演じることに専念した。監督が合田を、過去もあり、愛した女性もいて、心の傷も抱いていて、というような人間として描くことに重きを置いていると受け止めて役に臨んだ」と語った。合田の白いスニーカーについて、原作には特に理由はなかったが、ドラマでは水谷がセリフを加えた。"靴を洗いながら事件のこと、捜査のことを考えているのが好きなんだよ"と。青木は「上川さんが靴を洗っていると本当に考えているように見える」と笑った。地上波とWOWOWの違いにも話が広がり、内容の濃いセミナーとなった。


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◇公開セミナー・第36回名作の舞台裏 『御宿かわせみ』◇

日 時 : 2013年9月1日(日)
会 場 : イイノホール
ゲスト : 真野響子(出演)、小野寺昭(出演)、村上 慧(制作)、黛りんたろう(演出)
司 会 : 渡辺 紘史(放送人の会)
主 催 : 放送人の会、(財)放送番組センター

<作品の概要>
 平岩弓枝のロングベストセラーをドラマ化し、女性に絶大な人気を博した名作時代劇。江戸・大川端の旅籠「かわせみ」の女主人・るいと吟味方与力の弟・東吾、町人と武士という身分を超えた一途な愛を描いた。人情味豊かな捕物帳として今も根強い人気を持つこの作品は、『新・御宿かわせみ』のタイトルで30年ぶりの続編がCS時代劇専門チャンネルで放送された。(第1シリーズ(全24話)1980年10月8日~1981年3月25日、第2シリーズ(全23話)1982年10月6日~1983年4月13日放送/NHK)

<セミナーのようす>
 司会の渡辺も第1シリーズの演出を手掛けており、久し振りに家族が集まったような和やかな雰囲気の中進行された。真野も小野寺も共に「かわせみ」はライフワークという。主役に抜擢された当時、二人とも若く時代劇経験も少なかったが「最後は素晴らしい主役になった」と村上。真野の「るい」役に当初反対だった平岩弓枝も今は真野をイメージして書いているという。この作品は時代劇の様式や作法を知らない若いスタッフや役者を抜擢して作り上げた。渡辺は「毎日合宿していたような感じ」、村上は「皆、ものを知らないから着物を逆向きに着ていても平気。いつも目を光らせていた」と振り返った。黛が「最近の作品よりも切実な思いが伝わってくる」と述べると、村上が「最近の時代劇は少し乱暴な感じがする。かわせみは丁寧に作られていて、この時代の雰囲気をうまく伝えている」と加え、小野寺は「かわせみのような日本の良き時代の時代劇にまた自分も参加したい」と語った。真野の艶やかな着物は、当時、初日のリハーサルに着たもの。真野の33年ぶりの着物に会場から拍手が起こった。


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◇公開セミナー・第37回名作の舞台裏 『ミエルヒ』◇

日 時 : 2014年3月21日(金・祝)
会 場 : 情文ホール(横浜情報文化センター6階)
ゲスト : 安田 顕 (出演)、青木 豪 (脚本)、藤村忠寿(演出)、嬉野雅道(企画)
司 会 : 渡辺紘史(放送人の会)
主 催 : 放送人の会、(財)放送番組センター

<作品の概要>
 地域発ドラマとして高い評価を受け、文化庁芸術祭優秀賞、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞など、数々の賞を受賞した秀作ドラマ。北海道・江別の石狩川でヤツメウナギ漁をする父親(泉谷しげる)と10年ぶりに帰郷した息子(安田顕)、父親の再婚相手(風吹ジュン)が織りなす「家族」の生活を中心に、地方に住むことの意味が描かれた。(2009年12月19日/北海道テレビ放送)

<セミナーのようす>
嬉野が「観光地的なものを舞台にする気はなかった。自分の心に引っかからない町を舞台にしても仕方がない」と語ると、青木が「この作品は、嬉野さんに導かれるように書いた。何かに導かれている時は勝手にセリフが出てくる」と振り返った。人気バラエティ『水曜どうでしょう』から長い付き合いの安田の起用について藤村が「近過ぎてイメージになかった」と語ると、安田は「『なんでお前なんだ』と言われた」と笑った。藤村と安田の何でも言い合える関係性が、ラストシーンの安田のアップの表情など、いくつもの心に残る演技に繋がった。藤村は「僕らの中に、地域発のドラマを作ろうという気は全くない。北海道まで来てくれる役者さんの心意気は相当なものだから、逆に恵まれているとさえ思う」と語ると、嬉野が「もう二度とないくらい楽しい現場だった。気心が知れている人達が、其々のモチベーションで現場に臨み、自分がやりたい事だけに邁進できる環境があった」と続けた。生き生きしたゲストの話に、地域発ドラマというより、新しいドラマ作りの可能性を感じたセミナーであった。